日本のH-IIA(H2A)ロケット最終号機となる50号機。三菱重工業(三菱重工)は9月25日、愛知・飛島村にある飛島工場において、50号機のコア機体を報道関係者向けに公開した。

  • H-IIA 50号機の第1段・第2段機体

  • 50号機のコア機体は、「H-IIA最終号機完了記念」のパネルと共に公開された

同社が公開したのは、50号機の第1段・第2段機体。このコア機体の両サイドに、固体ロケットブースタ(SRB-A)2本を組み合わせる、「H2A202型」と呼ばれる形式で構成する。

  • 第1段主エンジン

  • 第2段エンジン

  • 50号機は、第1段コア機体にSRB-A 2本を取り付ける「H2A202型」と呼ばれる形式で構成。ただし開発時点で「どの衛星が引き当てられても対応できるようにする」(三菱重工)ために、実はSRB-Aを4本取り付けられる“204仕様”で製造している。今回の機体公開でも、実際に4基分の結合部を装備しているのが確認できた

50号機が宇宙へ運ぶのは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の温室効果ガス・水循環観測技術衛星「GOSAT-GW」。宇宙から二酸化炭素やメタンといった温室効果ガスを観測するGOSATシリーズの3番目の人工衛星で、2009年打ち上げの「いぶき」(GOSAT)、2018年打ち上げの「いぶき2号」(GOSAT-2)の後継機にあたる。

  • 50号機が宇宙へと運ぶ、温室効果ガス・水循環観測技術衛星「GOSAT-GW」の概要と諸元

50号機は発射から16分1秒後にGOSAT-GWを分離、任務を終える。GOSAT-GWを格納するために、50号機の上部には直径4m、長さ12mのシングルロンチ用衛星フェアリング(4S型)を装備する。

今回のコア機体は9月27日に飛島工場から出荷し、同月30日には鹿児島・南種子町にあるJAXA「種子島宇宙センター」の射場へ搬入予定。同センターの組み立て棟で、SRB-Aや衛星を格納するフェアリングなどを取り付ける。打ち上げ時期は現在調整中だが、2024年度中をメドとしている。

  • 50号機の飛行計画

  • 機体の製造状況と今後の予定

H-IIAは2001年の初号機打ち上げ以来、日本の基幹ロケットとしてさまざまなペイロードを宇宙へ送り届けてきた。これまでに計48機を打ち上げており、成功率は約98%。50号機をもって退役し、H3にその役割を引き継ぐ。

三菱重工は、2007年にロケットの製造から打上げまでを一貫して担う打ち上げ輸送サービスを開始。2013年からは、国際宇宙ステーションへ物資を運ぶ大型輸送手段として開発したH-IIBをラインナップに加え、2020年5月まで運用してきた(H-IIBは打ち上げ成功率100%)。

50号機はH-IIA/H-IIBシリーズの最終号機ということもあって、同社では記念イベントを計画中。報道陣向けの説明会ではその一例として、コア機体(ロケット段間部)や種子島射場への輸送用コンテナに記念デカールを貼り付けるイベントを予定しているそうだ。デカールの内容など詳細はまだ検討中ということだが、コア機体のデカールについては種子島の竹崎観望台側から見える位置に貼り付ける予定とのこと。

  • 50号機コア機体(ロケット段間部)や、種子島射場への輸送用コンテナには、H-IIA最終号機の記念デカールを貼り付ける予定(デザインなど、詳細は明かされなかった)

H-IIA 10号機以降、H-IIBシリーズの開発にも携わってきたプロジェクトエンジニアの穎川健二氏は、50号機に対する思い入れを報道陣から問われたのに対し、「いよいよ最終号機ということで大変感慨深く、寂しい気持ちもちょっとある。しかしだからといって必要以上に意識することなく、確実に打ち上げ成功につなげて有終の美を飾りたい」とコメント。

また、H-IIA初号機から開発に携わってきたというマネージング・エキスパートの田村篤俊氏は「思い起こせば、どれひとつとして優しい打ち上げはなく、かなり緊張の場面も乗り越え、この成功率を続けてこられたのかなと思う。応援していただいた顧客の皆様、JAXAの関係者、パートナー各社の協力や、地元で応援してくださった皆様のおかげ。そうした人々に49号機、50号機の成功を届けることが、我々の最後の試練かと思う」と述べた。

  • (左から)マネージング・エキスパートの田村篤俊氏、プロジェクトエンジニアの穎川健二氏