【農林水産省】食料自給率上がらず 消費者の選択は厳しい?

農林水産省は8月8日、2023年度の日本の食料自給率は38%(カロリー基準)だったと発表。38%は3年連続。政府は今年5月、食料・農業・農村基本法を国会で改正し、国産化の比率を上げる食料安全保障の強化を打ち出したが、消費者の選択をコントロールすることの難しさを印象づけた。

 日本の食料自給率は記録のある1965年の73%から少しずつ下がり、この十数年は40%前後で推移している。ただ、主要国の食料自給率は、2021年で米国が104%、フランス121%、ドイツ83%などと高く、政府は2030年に45%に引き上げる目標を持っている。8日にあった記者会見で、坂本哲志農林水産大臣は「麦・大豆、加工原料用野菜等の輸入依存度の高い品目の国産転換をさらに推進していく」と語った。

 23年の日本の食料自給率の内容を見ると、上昇要因の一つが、国内の小麦が豊作で10%増だったことがあげられる。低下要因の一つが、砂糖の原料となるてん菜に病害が発生し、3割ほどの減収となったこと。

 日本の砂糖類は半分を輸入に頼るが、4割が北海道産のてん菜で、1割が沖縄などのサトウキビを原料にしている。もともと、カロリーベースで全体の2割を占める米の消費が年々減っていることは大きな低下要因となっている。

 日本人が好きなパンやラーメンの小麦の多くは輸入だ。牛肉や豚肉の消費量も増加しているが、これらを育てるトウモロコシなどの飼料の多くは輸入品に頼る。農水省はこれらを差し引いて自給率を出しているため、こちらも潜在的な低下要因となっている。

大和総研副理事長・熊谷亮丸の視点「岸田政権の成果と積み残された課題」