【厚生労働省】事務次官に伊原氏 新体制で臨む社会保障改革

7月の幹部人事で大島一博事務次官が退任し、後任に伊原和人氏が昇格した。伊原氏は1987年に旧厚生省に入省し、前任の大島氏とは同期の間柄だ。これまで厚生労働省政策統括官、医政局長などの要職を歴任し、省内外の予想通りの人事と言える。

 保険局長時代には、約30年ぶりとなるインフレ下で24年度の診療報酬改定を取りまとめた。就任時の記者会見では「人口減少やインフレ経済という時代の大きな転換期を迎えている。柔軟な政策で対応していきたい」と力強く抱負を述べた。

 武見敬三・厚労相の伊原氏への信頼は厚く、「要職を見事にこなし、厚生労働政策全般に精通している」と太鼓判。大島前次官も「入省同期で昔から尊敬している。きっとうまく舵取りできる」とエールを送った。

 ただ、7代連続で旧厚生省出身者が次官に就くことになり、旧労働省出身者のモチベーション低下も懸念される。今回の人事では1990年に旧労働省に採用された村山誠官房長が留任。安定した国会対応などが高く評価されており、省内では「久々の旧労働省出身の次官になるかも」との期待が高まっている。

 事務方が一新された厚労省には、年金・医療・介護・雇用といった社会保障の諸課題が待ち構えている。特に5年に1度の年金制度改正は政局絡みになる可能性もある。年金局長には90年に旧厚生省採用の間隆一郎氏が起用された。

 直近では老健局長として2024年度介護報酬改定を担った。16年に年金課長として制度改正を経験しており、省内では「これ以上ない最適の人事」と受け止められている。

 年金制度改正は、給付水準の低下が見込まれる基礎年金の底上げが主要課題だ。給付の手厚い厚生年金に加入できる非正規・短時間労働者を増やす案などが検討されており、年末までに成案をまとめる。間氏も次官候補の一人で、財源確保を巡って難航が予想される年金制度改正でその手腕が問われる。

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