ルネサス エレクトロニクスは7月25日、2024年12月期第2四半期の決算説明会を開催し、同四半期の概況などの説明を行った。

同社社長兼CEOの柴田英利氏は冒頭、同四半期を振り返って「反省の決算」と表現。「第2四半期の数値は、第1四半期時点での見通しが楽観的過ぎた。自動車において継続的な成長を見込んでいたが、堅調な中でも少し慎重な方向にアジャストしている。もう1つは、広くとらえた産業用での需要の調整が当初思い描いていたよりも、かなり長く深いものになっている。もともとは第2四半期を底に第3四半期から回復する見通しを持っていたが、現時点では第3四半期も厳しいと見方を変更。第4四半期以降、どこかのタイミングで回復していくと思っているが、強めに在庫をコントロールしていこうと思っており、第3四半期の(売り上げの)トップラインは少し落とすこととなる」と、第3四半期も売り上げが厳しい見通しを示す一方、「ただし、早晩、市場が回復する見通し自体は堅持。これからのテーマは、従来を増しての成長で、そのためのR&Dに対するブレーキは踏まない。その分、オペレーションマージンが第3四半期はへこむが、それを甘受して投資を進めることで、成長への手を緩めない」と、この停滞が一時的なものであり、継続してR&Dへ資金を投じていくことで、将来の成長につなげていくことを強調した。

事前予測は上回るものの減収減益となった第2四半期決算

同四半期の業績としては、売上高が前年同期比2.7%減、前四半期比2.0%増、事前予想比1.1%増の3588億円、営業利益は前年同期比14.3%減、前四半期比2.6%減、事前予想比0.3%増の1106億円となり、前年同期比では減収減益となった。ただし、事前予想に対しては上回っており、その要因としては海外比率が高く、為替の影響があるとのことで、為替要因を除くと、売上高は前年同期比8.6%減、前四半期比0.4%増となるとしている(ざっくりと同社の現在の地域別比率としては日本が20%強ほど、米国が10%強、欧州15%程度、中国が30%ほど、残りがその他としている)。

  • ルネサスの2024年第2四半期業績概要

    ルネサスの2024年第2四半期業績概要 (出所:ルネサス発表資料、以下すべてのスライド同様)

また、セグメント別にみると、自動車向け事業は稼働率の改善もあり売り上げが伸びて前年同期比18.2%増、前四半期比6.9%増の1904億円となったものの、産業・インフラ・IoT向け事業はセグメントミックスの悪化もあり、前年同期比18.9%減、前四半期比3.1%減の1662億円と減収となったとする。為替影響を除くと、自動車向けは前年同期比11.5%増、前四半期比5.6%増、産業・インフラ・IoT向けは前年同期比24.5%減、前四半期比で5.5%減としている。

  • 事業セグメント別の業績概要
  • 事業セグメント別の業績概要
  • 事業セグメント別の業績概要

こうした市場環境の動きもあり、在庫の状況も同社が抱える在庫、チャネル在庫ともに増加している。この増加要因としては、自社在庫に関しては、103日まで拡大しているが、ダイバンクの拡大に伴う仕掛在庫の増加が背景にあり、第3四半期以降もこれまでも拡充を図ってきた40nmマイコンを中心にダイバンクの拡充を図っていくとしている。一方のチャネル在庫については、前四半期比で増加し11週となっているとする。自動車向けに関しては想定通りで増加したとするものの、増加幅が想定よりも若干多かったとするほか、第3四半期については自社在庫、チャネル在庫ともに増加を計画しているが、現状ではそのペースを緩めるとしている。一方の産業・インフラ・IoT向けについては、当初は在庫が減少していくとの見込みを建てていたが、実際は一部の商流変更もあり増加が増加。産業用途、マスマーケット、インフラ用途も停滞し、全体として在庫が増えることとなったとする。第3四半期については、自社在庫、チャネル在庫ともに前四半期比での販売増加に伴う減少を見込んでいるとする。

  • 在庫状況の推移

    在庫状況の推移

稼働率は上昇、第3四半期の夏季休暇分を前倒し

同社の工場稼働率を見ると、6インチラインは前四半期比で低下したものの、8インチ、12インチともに上昇している。これは、第3四半期に実施される夏季休暇に備えた生産の前倒し分を含んでいるためで、第3四半期はその分、全体として10ポイント半ばの低下見通しだとしている。

また、設備投資については売上比で見ると10.2%に到達するレベルとなっているが、この件については、米国のオフィス統合やIPの購入などが背景にあるとする。

  • 稼働率および設備投資額の推移

    稼働率および設備投資額の推移

第3四半期は稼働率の減少に伴う減収を想定

第3四半期について同社は、売上高を(予測中央値と比較した場合)前年同期比8.3%減、前四半期比3.0%減の3480億円±75億円、営業利益率も前年同期から7.4ポイント減、前四半期比で3.3ポイント減となる27.5%としている。背景には、稼働率の減少ならびに売上規模の減少、その他の費用増、円安への対応などがあるためとしている。

  • 第3四半期の予想

    第3四半期の予想

なお、同社は6月20日付でTransphormの買収を完了しており、6月末のバランスシートより同社分を追記したほか、プリント基板設計ソフトウェアとして強みを持つAltiumの買収についても、各国の規制当局からの承認の取得を完了しており、7月12日付でAltiumの株主総会で承認を得たほか、7月19日に豪州裁判所の承認取得を受けて買収の抗力が発生することが決定。現在、その他の取引条件の充足を経ている段階で、早ければ8月1日にも買収を完了する予定だとしている。