日本オラクルは7月17日、クラウドERP「Oracle NetSuite」に関するイベント「SuiteConnect Tokyo」を開催した。同社はERPとして、あらゆる規模の企業をターゲットとした「Oracle Fusion Cloud ERP」も提供しているが、「Oracle NetSuite」は、成長企業を主な対象としている。

最初に登場した日本オラクル株式会社 執行役員 NetSuite事業統括 日本代表 カントリー・マネージャー 渋谷由貴氏は、イベントのタイトルにも含まれている「SuiteConnect」について、次のように説明した。

「企業が成長すればNetSuiteを使いたくなり、また、NetSuiteを使えば企業は成長するという意味が込められている」

  • 日本オラクル 執行役員 NetSuite事業統括 日本代表 カントリー・マネージャー 渋谷由貴氏

渋谷氏は、国内企業がグローバル市場の激化に直面していることを指摘し、「日本の企業は現在、グローバル全体を効率よく管理すること、各国の規制に対応することが求められている。NetSuiteは規制対応する機能を提供しているので、これらを活用することで、世界中のサプライヤーとビジネスできる。われわれは、お客様を次のレベルに引き上げることを使命としている」と語った。

日本市場にローカライズした製品を発表

Oracle NetSuite エグゼクティブ・バイスプレジデント 兼 創業者 エバン・ゴールドバーグ氏は、オラクルとのパートナーシップのメリットについて、「NetSuiteはOracle Cloud Infrastructure上で稼働しており、最高級のデータベースであるOracle Databaseにアクセスできる」と説明した。

基調講演後のブリーフィングでは、「オラクルはさまざまなテクノロジーにAIを提供しており、今やAIソリューションのリーダーになっている。NetSuiteもオラクルのAIサービスを使える」と、オラクルのAIサービスを利用できるメリットについて言及していた。

  • Oracle NetSuite エグゼクティブ・バイスプレジデント 兼 創業者 エバン・ゴールドバーグ氏

そして、ゴールドバーグ氏は「統一されたスイートを提供すること、お客様の成長を支援すること、創業以来ミッションは変わらない。さらに、ローカルに根付くことを常に意識してきた。ローカルに根付くというビジョンが日本から始まった」と語った。

イベント開催に合わせ、日本を対象としたローカライゼーションに関する発表が複数行われた。以下、その概要を紹介しよう。

NetSuite SuiteSuccess Manufacturing Edition

日本の製造業を対象とした「NetSuite SuiteSuccess Manufacturing Edition」が発表された。同製品は、ロールベースのダッシュボード、レポート、KPI、およびワークフローが事前に定義されている。

日本向けのローカライゼーションとして、国内の製造企業が日本の請求および税務規則に準拠し、日本のビジネス慣行に沿った形で請求を行い、財務報告を作成できるような機能を提供する。ゴールドバーグ氏は、同製品により、「われわれがこれまで製造業を成長に導いてきたベストプラクティスを利用できる」と述べた。

NetSuite Enterprise Performance Management

「NetSuite Planning and Budgeting」と「NetSuite Account Reconciliation」を含む「NetSuite Enterprise Performance Management (EPM) 」を日本で導入する計画が発表された。

「NetSuite EPM」は、「Oracle Fusion Cloud Enterprise Performance Management」を基盤として構築されており、「計画・予算編成」「勘定調整」「収益性とコスト管理」「ナラティブ・レポーティング」「税務申告」の機能を備えている。日本の税務報告基準への準拠をサポートする。

NetSuite Analytics Warehouse

NetSuite向けに事前に構築されたAI対応クラウド・データウェアハウスおよび分析ソリューション「NetSuite Analytics Warehouse」を日本で提供する計画が発表された。

データウェアハウスと分析ソリューションは、日本企業向けローカライズされており、データ管理の簡素化と、AIを活用したインサイトを得ることを支援する。

ゴールドバーグ氏は、同製品について、「過去の請求書を学習して予測するので、データサイエンティストがいなくても全体のトレンドを見ることができる。AIを組み込んでいるので、プログラミングを行うことなく、すべてのソースからデータを取り込んでモデルを作り洞察を得られる」と説明した。

NetSuite Text Enhance

生成AIを備えた新機能「NetSuite Text Enhance」を日本で提供する計画が発表された。同機能はスイート全体に組み込まれ、ユーザーがNetSuiteの製品群から自社固有のデータや関連データを活用して、文脈に即したパーソナライズされたコンテンツを作成したり、精度を高めたりできるようにする。

日本は英語圏以外で「NetSuite Text Enhance」が提供される最初の市場となり、高品質で自然な日本語が生成されるという。

同機能は、「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」上に構築され、オラクルのAIサービスを活用する。データを保護するため、NetSuiteのワークフローに直接、ロールベースのセキュリティが組み込まれている。

NetSuiteのAIとセキュリティを支えるオラクルのテクノロジー

NetSuiteにおけるAIの取り組みについては、Oracle NetSuite ブライアン・チェス氏が説明を行った。同氏は、「NetSuiteでは、財務、営業、人事とあらゆる業務にAIを展開している。AIを導入する簡単な方法はチャットボットを付加することだが、これは正しい方法ではない」と述べた。

  • Oracle NetSuite ブライアン・チェス氏

チェス氏によると、NetSuiteでは、アドバイスとアシストという2つのカテゴリーの下、AIを展開しているという。例えば、アドバイスとしてはデータの洞察を支援し、サプライチェーンコントロールの予測などを行う。

一方、アシスタントを行う機能が、国内での計画が発表された「NetSuite Text Enhance」だ。チェス氏は、「AIはデータがすべて。理想的なシステムはすべてのデータを統合して、AIがアクセスできるようにすること。これは、NetSuiteが以前からやってきたこと よいポジションにいる。Text Enhanceがその例といえる」と語った。

また、チェス氏は「あらゆるテクノロジーにおいてセキュリティが重要であり、AIでも求められている。オラクルはOCIにAIを閉じ込められるので、セキュリティの強化に役立つ」と語り、オラクルとの関係にはメリットがあることを強調した。