日本オラクルは4月18日、国内イベント「Oracle World Tour Tokyo 2024」を開催した。同イベントにおいて、トヨタ自動車 事業開発本部 新事業推進部 マリン事業室(トヨタマリン) 主幹の西田健一氏が、OracleのSaaSを活用した同事業のレガシーシステムの刷新について説明した。トヨタマリンのシステム刷新の狙い、詳細はどのようなものなのだろうか。

  • トヨタ自動車 事業開発本部 新事業推進部 マリン事業室(トヨタマリン) 主幹 西田健一氏

Visual Basicで構築したレガシーシステムを刷新

トヨタ自動車は、1997年からマリン事業に取り組んでいる。自動車エンジンや自動車技術の応用、品質管理基準の導入など、クルマづくりで培ってきた技術をプレジャーボートに注いでいる。

西田氏は、「当時社長だった豊田章男は『トヨタは出遅れている』と述べたが、われわれは『マリンDX(デジタルトランスフォーメーション)』として、DX」に取り組んでいると述べた。

トヨタマリンは、独自要件でスクラッチ開発したレガシーシステムを利用して、新艇建造のための部品調達・在庫管理やアフターパーツの販売管理を行っていた。レガシーシステムはVisual Basicで構築したシステムで、だましだまし使っていたそうだ。

一方、事務処理工数の増加や運用ルール見直しなどのシステム改修における改善のスピードが課題となっていた。加えて、潜在顧客を開拓するための先進技術の活用や顧客満足度を最大化させる仕組みの構築、他のプラットフォームとの連携強化なども求められていたという。

複雑なサプライチェーンの効率化に向けクラウドに移行

こうした課題を抱える中、トヨタマリンはオラクルのSaaS「Oracle Fusion Cloud Enterprise Resource Planning (ERP)」と「Oracle Fusion Cloud Supply Chain & Manufacturing (SCM)」を活用して、レガシーシステムを刷新することに決めた。

西田氏は、「機能別に存在しているレガシーシステムを一気通貫で使えるようにするため、Oracle Cloudを導入することにした。レガシーシステムの優先順位をつけて、まずは、調達からシステムを組み替えていく」と、レガシーシステムの移行について説明した。

西田氏によると、トヨタマリンの調達業務は非常に煩雑だという。というのも、エンジンは車の部品を使うが、水冷に変更するという「マリナイズ」の作業が必要だからだ。つまり、トヨタマリンはクルマのサプライヤーおよび独自のサプライヤーの双方を抱えている。

さらに、西田氏は取引先の規模もさまざまであるがゆえの苦労もあると話した。

「マリン事業は国内ではそれほど普及していない。そのため、国内だけでは部品をまかないきれず、海外からも調達したい。さらに、商社とも付き合うし、小さな会社とも付き合うので、さまざまな規模の会社と付き合う必要がある。ただし、小さな会社にあわせると、仕様が細かくなる。そこで、標準を決めることが大切だと感じた」

そして、西田氏は「皆さんがご存じの通り、トヨタの標準は独自。そこで、サプライヤーと付き合う上ではコミュニケーションを重ねることに注力してきた」と語った。

Oracle Cloudの費用対効果、短期導入を評価

具体的には、開発からアフターサービスまで統合されたサプライチェーン基盤上で、新艇の個別受注からアフターサービスまでを一元的に統合し、部品表、調達、納期、在庫管理などの業務を行っている。

また、艇ごとの原価管理の可視化、改訂情報をタイムリーに反映させるメンテナンス業務、在庫補充数量のミニマックス計画に基づく自動提案にも取り組んでいる。

西田氏はOracle Cloudを選んだ理由について、「トヨタマリンのビジネスはボリュームが少なく、国内事業が中心なので、それほど大規模でなくてもいいのではという話になった。また、長い目で見た時に、費用対効果も高く、今の業務を速やかに乗せ換えられると考えた」と述べた。

「Oracle Cloud ERP」と「Oracle Cloud SCM」上に構築した調達システムは稼働済みであり、来月にはフェーズ2として、機能を追加する予定だ。

西田氏は、最後に「われわれには中長期計画があり、目指すべき姿に向けて一定の目標をもって進めている。そして、目指すべき姿を重ねることであるべき姿に到達する。世の中が変われば目標も変わる」と、プロジェクト遂行に向けた意欲を語っていた。