半導体製造向け先端材料やプロセスソリューションを手掛ける米Entegrisは、韓国の4か所(華城、原州、平沢、水原)に製造施設を構えるほか、2012年にはSamsung Electronicsが本社を構える水原市に「Entegris Korea Technology Center(KTC)」を設置し、韓国顧客向け製品の研究開発を行ってきた。

しかし近年、研究活動の活発化に伴って研究施設が手狭となってきたこと、ならびに韓国の大手顧客のDRAMおよび3D NANDで求められるニーズのさらなるサポートなどを踏まえた事業拡張を決定。安山市にある漢陽(ハンニャン)大学と土地借用契約を結び、同大学のERICA(Education Research Industry Cluster at Ansan)キャンパス内に、新たな研究棟の建設を進めている段階にあるという。

  • 韓国漢陽大学キャンパス内の経済自由地域に建設中のEntegrisの新拠点

    韓国漢陽大学キャンパス内の経済自由地域(申請中)に建設中のEntegris Korea Technology Center完成予想図 (出所:Entegris)

この新研究施設は、2024年末までに完成する予定で、高度な材料分析機能とプロセス開発機能を組み合わせて、CVD、CMP、ウェットエッチング・洗浄などの先端半導体プロセス分野における顧客に向けたEntegrisのサービス能力をさらに拡大する役割を担うとしている。

2023年末に発表された同社リリースにおいて同社の社長兼CEOであるBertrand Loy氏は、「Entegrisは韓国の半導体顧客と30年近く協力関係を築いており、新拠点は業界の将来において重要な役割を果たすと考えている。我々の最高の能力をできるだけ顧客に近い技術センターへ投入することで、より効果的に現地で顧客と協力することができる。この拡張によりEntegrisと顧客の間に新たな機会が生みだされ、歩留まり、信頼性、性能の課題に対する新しいソリューションを共同で生み出すことを心から楽しみにしている」とのコメントを出している。

また、建設地となっている漢陽大学のキジョン・リー学長は、「Entegrisの研究所建設は、漢陽大学と企業のいずれの将来の成長にとって重要な節目となると確信している。Entegrisとの協力は、大学の学生や研究者にさらなる機会を提供するとともに、半導体業界の革新に貢献することが期待できる」と、建設に際する期待を述べている。

なお、同大ERICAキャンパスには、すでにKorea Electrotechnology Research Instituteなど3つの韓国国立研究所や民間企業であるLG Innotekの研究所、韓国大手のインターネット・サービスプロバイダであるKAKAOの巨大データセンターやスタートアップの事業施設などが設置されており、2025年末には、ソウル駅と漢陽大学ERICAキャンパス駅(仮称)を30分で結ぶ韓国鉄道公社(K-Rail)の高速鉄道も開通する予定となっており、大学当局は、京畿道および安山市政府の産業振興支援を踏まえ、より多くの企業誘致を進めることで、文字通りの教育、研究、産業が一体となった産学連携の活性化を図ろうとしている。