米国政府は6月11日、宇宙船や人工衛星向け太陽電池を手掛けるSolAero Technologiesの親会社であるRocket Labに対し、CHIPSおよび科学法(CHIPS法)に基づき最大2390万ドルの補助金を提供することを発表した。

この資金提供は、宇宙船や人工衛星に電力を供給する宇宙グレードの太陽電池に対する、より堅牢で回復力のある供給を生み出すのに役立つと米商務省の担当者は述べており、このプロジェクトを通してRocket Labの放射線耐性太陽電池用化合物半導体の生産量は今後3年以内に50%増加し、米国における宇宙用太陽電池に対する国家安全保障と商業需要の高まりに対応することが可能になるとしている。また、この補助金により、100人以上の製造に関わる直接雇用が創出されるという。

  • Rocket Lab(SolAero)が手掛ける宇宙グレードの太陽電池

    Rocket Lab(SolAero)が手掛ける宇宙グレードの太陽電池 (出所:Rocket Lab)

対象となるのは米ニューメキシコ州アルバカーキにある拠点で、そこでRocket Labは宇宙グレードの化合物太陽電池の生産を行ってきており、これまでにジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)やNASAの火星ヘリコプター「インジェニュイティ」および火星探査機「インサイト」などの探査科学ミッションや、ミサイル監視システムなどといった米国の重要な宇宙計画に広く活用されているほか、月面探査「アルテミス計画」での活用も予定されているという。今後も宇宙、特に民間企業による地球低軌道(LEO)における衛星を活用したサービスの拡大が進むにつれ、より多くの宇宙グレードの太陽電池が必要になってくることもあり、宇宙から地上を監視する防衛システムを含め、高効率太陽電池の重要性が増してくるとCHIPS法事務局は説明している。

ジーナ・レモンド米国商務長官も「太陽電池は、米国の通信および宇宙技術の電力供給と運用を維持するために重要であり、この補助金は米国の軍隊、NASA、民間宇宙産業が、米国の安全を維持し、科学的発見と宇宙商取引をリードし続けるために必要な特殊な半導体技術にアクセスすることに役立つ。バイデン大統領のリーダーシップとこのCHIPS法に基づく投資によって、米国はこれらの半導体の高まる需要を満たすと同時に、米国の半導体チップ製造能力の多様化に貢献し、ニューメキシコ州の労働者に新しい質の高い雇用を創出していく」と述べている。

残り少なくなってきたCHIPS法予算

米国商務省は、大手半導体メーカーであるIntelやTSMC、Samsung Electronics、Micron Technologyなどに対し、数億ドルから数十億ドル規模の補助金をCHIPS法予算から支出することを決定済みであるため、CHIPS法として確保されている予算(5年合計390億ドル)の残りはかなり少なくなってきている。そうした理由もあってか最近は、中小企業への少額の資金提供が相次いで発表されている。米国にはTexas Instruments(TI)やAnalog Devices(ADI)、onsemiなどまだまだ多くのメジャー半導体メーカーが名を連ねているが、それらの工場の新設・増設に対する補助金の支給が決定したという話は出てきていない。すでにミネソタ州のレガシーファウンドリであるSkyWaterは、CHIPS法による自社に対する補助金支給が絶望的として、予定していたすべての工場新増設計画を中止している。