きらやか銀行ショックで地域金融システム不安を警戒

山形県が地盤の「きらやか銀行」と、「仙台銀行」を傘下に持つ「じもとホールディングス(HD)」が事実上国有化される。公的資金による資本注入の見返りに発行した優先株に対する配当ができなくなり、国が持つ株に約63%の議決権が生じることになったためだ。

 配当を復活すれば、「議決権は消える」(金融庁幹部)というが、第2地銀2行による再編で誕生した、じもとHDは財務力や収益力が脆弱で、復配のめどは立っていない。

 じもとHDは仙台銀行の分も含めて計780億円にのぼる公的資金を抱える上、収益力も弱く、今後は自力での生き残りが危ぶまれる。国有化の長期化は必至と見られており、経営権を事実上、手にする金融庁が再編も含めて新たな生き残り策を検討することになりそうだ。

 国有化の出口を見つけられなければ、世論の批判の矛先が当局に向かう可能性もある。金融庁は2023年9月、コロナ禍で打撃を受けた中小企業への資金供給円滑化を目的とする、改正金融機能強化法の特例を適用し、きらやか銀行に3度目の公的資金注入(180億円)を認めた経緯があるからだ。関係筋によると「銀行の財務状況はこの時点で相当傷んでいた」。いずれにせよ、金融庁は将来の公的資金回収の道筋を明確に描くことが厳しく求められそうだ。

 きらやか銀行を巡っては、経営への先行き不安から顧客離れも起きている。金融庁は今回の問題をきっかけに、基盤の脆弱な他の地銀に影響が波及し、地域金融システム不安が再燃することを警戒し、経営モニタリングを強めている。

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