三井不動産は、ライフサイエンス領域のイノベーションを推進する賃貸ラボ&オフィスである「三井リンクラボ」に入居する研究開発型スタートアップ向けに、研究用機器の調達および労務管理に関する支援サービスを開始したことを発表した。

同支援サービスは、ラボの入居者が抱えるさまざまな課題への解決施策を提供する「オープンイノベーション支援プログラム」の一環として提供されるものであり、スタートアップを生み育てるエコシステムの創出のためには、官のみではなく民も協力した取り組みを行うことが必要との考えに基づく取り組みとなる。

三井リンクラボはこれまでに三井リンクラボ葛西、三井リンクラボ新木場1・2、三井リンクラボ柏の葉の4施設が開設済みで、ライフサイエンス領域を中心にさまざまな研究開発を行う企業が入居。そうした入居企業の中でもスタートアップ企業が全体の4割近くを占めており、そうした研究開発型スタートアップ企業の多くから、「本業以外のバックオフィス業務に十分なリソースをかけられない」という会社経営の課題についての声があり、そうした課題の解決の一助となるべく今回のサービス開始に至った。

  • オープンイノベーション支援プログラムの枠組み

    三井不動産が提供するオープンイノベーション支援プログラムの枠組み (出所:三井不動産)

今回の取り組みでは、「研究に集中できる環境づくり」に向けてまず2つの取り組みを開始するという。1つ目の取り組みは「研究用機器共同購入」で開始時点の対象施設は、三井リンクラボ新木場2のみだが順次拡大させていく予定。これは、同社が三井リンクラボへの集積によるスケールメリットを活かして入居および入居検討企業の購買力を束ねることで購買数を確保することで市場価格より割安の三井リンクラボ向け特別価格を実現し、入居者に割安で機器を購入できるようにする取り組みとなる。

  • 取り扱い機器の一部

    取り扱い機器の一部 (出所:三井不動産)

まず三井リンクラボ新木場2において、幅広いラボ什器・理化学機器を扱うサーモフィッシャーサイエンティフィック ジャパングループならびに設計支援ができる代理店であるバイオテック・ラボと協業する形でサービスの提供を開始。今後対象施設や、取扱い商品を順次拡大させていく予定としている。

入居および入居検討企業にとっては、研究開発に必要な研究用機器を取り揃えるための資金負担の削減につながるほか、スムーズな調達の実現というメリットが見込める一方、メーカーや代理店にとってもユーザーにまとめてアクセスできるという意義がああることから、ライフサイエンスエコシステム全体の活性化につながる取り組みになると三井不動産では説明している。

2つ目の取り組みは、「産業保健サービス」で開始時の対象施設は、三井リンクラボ新木場1・2および三井リンクラボ葛西だが、その後も順次対象施設を拡大させていく予定。同サービスは、これまでも入居者向け講習会の実施などを通じて「労働安全衛生」に関する入居者の知識向上支援に取り組んではきたが、そうした取り組みを踏まえ入居者からは「今後会社が拡大した時に、何から対応すべきか」、「どのように適切な産業医を選べば良いか」といった具体的な悩みの声が上がるようになってきたことを受けて提供を開始したもので、三井リンクラボとして、日本医師会認定産業医(労働衛生コンサルタント有資格者)を入居者へ紹介することで、薬品を取り扱うなどラボで有害業務を行う「ライフサイエンス企業」ならではの義務(特殊健康診断や作業環境測定実施など)へのフォローアップを含むラボ入居者に寄り添った産業保健サービスを提供するほか、企業のさらなる価値向上を目指す上での「健康経営」についてもアドバイスを行うとしている。

なお、三井不動産では、今後もさまざまな研究者にとって利用しやすい場の整備に向け、サービスの拡充などを図っていきたいとしている。