日建設計は、建築設計者向けApple Vision Proアプリ「Whitemodel(仮)」を開発したことを発表した。それに伴い、同社オフィスであるPINTにて、同アプリの体験会が実施された。本稿では、アプリの概要や体験の様子をレポートする。
Apple Vision Proを活用した「Whitemodel(仮)」
今回発表された「Whitemodel(仮)」は、ホロラボの協力のもと開発されたもので、Apple初の空間コンピュータである「Apple Vision Pro」をデバイスとして利用するアプリとなっている。
デバイスとして使用されているApple Vision Proは、Appleが2024年2月に米国で発売した空間コンピュータで、自分のいる空間にデジタルコンテンツが物理的に存在しているかのように操作が可能となるウェアラブルデバイスだ。
同デバイスは、2023年6月に発表されて以来、アメリカ限定で発売されているもので、体験会が行われた5月28日の時点では日本未発売のデバイスとなっている。
アメリカでは、製造業などですでにApple Vision Proのビジネス活用も出てきており、今後日本企業での活用の広がりも期待されているという。
「Whitemodel(仮)」の概要
こうした中、日建設計はApple Vision Proの3D映像が高精緻であることや、周囲にある物体との距離感のズレを気にしなくて良いという点に着目し、建築設計者向けのアプリとして「Whitemodel(仮)」を完成させた。
同アプリは、BIM(Building Information Modeling)データを取り入れて建築の白模型をバーチャル上に再現することを主軸とした「3Dモデルインポート機能」、他白模型の中に植栽や人などを追加する「点景追加機能」、同じ模型を違う拠点にいる複数の人が同時に見ることが可能な機能などを備えている。
これまで使用されていた建築模型は、スチレンボードをカッターと定規を駆使してカットして、接着材でつけるという方法で基本的に手作りで作成されていた。そのため、「図面の修正があると作り直さなくてはならない」「大きくて置き場所に困る」「捨てると産業廃棄物になってしまう」という課題を抱えていたという。
こうした課題にを「Whitemodel(仮)」が解決する。具体的には、「模型制作労力の低減による業務生産性の向上」「従来の模型で不可能な繊細な表現や自在なスケール変更が可能」「複数人で同時に同一モデルのレビューが可能」という3点を実現する。
筆者も「Whitemodel(仮)」を体験し、日建設計東京ビルの外観モデルや内装を見させてもらったが、ゴーグルを付けているとは思えないクリアな視界で模型を見られるほか、用途に応じて簡単に倍率を変えることができるため、さまざまな場面で利用できそうだと感じた。
同社は今後、社内デザインレビューでの活用やホロラボよりパッケージ化して販売することを検討している。担当者の方によると、2月に行われた日建設計内でのApple Vision Proの社内体験会でも評判がよかったそうで、今後、デザイナーを中心に活用を広めていきたいという。