ベルギーimecのCEO兼社長であるLuc Van den hove氏は、「ITF(imec Technology Forum) World 2024」の開催にあたってベルギー・アントワープにて記者会見を行い、imecの現状と今後の方向性について説明を行った。
欧州の強みとして研究と製造装置への注力を提言
例えば2nm以降の先端半導体研究用パイロットラインをベルギーに設置する計画に関して同氏は、「Rapidus(ラピダス)が日本政府の支援を受けて工場の建設を進めているのとは異なり、欧州の半導体企業が独自の2nm以降の半導体工場を建設する前兆とみなされるべきではない。欧州勢が2nm以下の独自の商用ファウンドリを設置することは意味があるかどうかは疑問だ」と述べた。
また、「欧州の半導体業界は最先端プロセスに対応可能な半導体製造メーカーを作ろうとするのではなく、研究センターや重要な半導体製造装置の生産者として、欧州の強みを強化することに注力すべきだ」との持論を展開し、世界最大級の半導体製造装置メーカーであるASMLやその光学システム開発パートナーの独Zeiss、プロセス研究開発パートナーとしてのimecなどがすでにいることを挙げている。さらに、「現在、IntelとTSMCがドイツにそれぞれ先端およひレガシー半導体製造用ファブ(ファウンドリ)を建設中だが、いずれも欧州の半導体企業(=IntelやTSMCの潜在的顧客)にとって地政学的に重要である。中国がレガシー半導体の生産能力を大きく拡大しようとしているのは、欧州にとって潜在的な地政学的リスクだ」とし、必ずしも欧州の半導体業界そのものが半導体工場を有しなくても、パートナーと協力していくことでそうした課題が解決できるとし、より付加価値の高い取り組みを進めて行くべきだとした。
このほか、同氏は予定されている日本における研究開発施設の設置について、現在は日本政府や研究パートナーとなるLSTC関係者と協議を進めている段階であり、まだ具体的な内容を発表出来るような進展はないとしている。imecは2022年12月、日本に研究開発施設を設置する計画があることを初めて明らかにし、2023年5月にもimecを視察した西村経済産業大臣(当時)に対して日本に研究施設を設置する計画を有していることを伝えていた。
研究開発施設の開設の前に日本法人を年内に設立へ
なお、imecでは、このほど伊藤慶太氏を「Head of Strategic Partnership Japan(日本における戦略的提携事業推進総責任者)」に任命したことも明らかにしている。同氏はアントワープで行われた記者会見にも登壇。これまで、imecは日本に法人組織を有しておらず、日本市場担当者が個人ベースでセールス活動を行ってきたが、伊藤氏によれば、今後、日本に研究開発施設を設立するにしても、新たな事業展開を行うにしろ、その第一歩としてまずは日本法人を設立する必要があり、年内をめどにその準備を進めているということである。伊藤氏は自身は、過去30年以上にわたる日米欧の半導体製造装置・材料業界での経験を有しており、そうした経験を生かして、imecと日本勢の戦略的協業体制の強化を図るとしている。