インターステラテクノロジズ(IST)は、小型人工衛星の物流サービスを手掛けるイタリアのベンチャー企業・D-Orbitとの間で、ロケット打ち上げサービス提供に関する包括契約を締結したことを発表した。

  • D-Orbit(左)とIST(右)の企業ロゴ

    インターステラテクノロジズは、イタリア・D-Orbitとの間で包括契約を締結した。(c)インターステラテクノロジズ(出所:IST)

ISTは、近年の宇宙市場拡大を牽引する小型サイズの人工衛星をターゲットとしたロケット「ZERO」を開発しており、民間単独では国内初の宇宙到達実績を持つ観測ロケット「MOMO」で得られた知見を土台として、一気通貫の開発・製造体制による“競争力のある価格”と、多様化する衛星のビジネスモデルに合わせ専用機として打ち上げる“柔軟性”を強みとしている。加えて同社は、国内およびアジア・オセアニア諸国の衛星事業者に対しては、発射場が近く打ち上げまでの手間やコストを削減できるなどの“利便性”も提供価値として付与していくとする。

  • 「ZERO」のスペック

    ISTが開発するロケット「ZERO」のスペック。(c)インターステラテクノロジズ(出所:IST)

一方のD-Orbitは、これまで15回の軌道上ミッションを成功させ、累計140機以上の衛星を軌道に投入した実績を有する、衛星向けロジスティクス分野におけるキープレイヤーだ。同社は複数の小型衛星を搭載できる「ION」を自社で開発・製造し、衛星を事業者が希望する軌道へと正確に投入する「衛星のラストマイルデリバリーサービス」、軌道上実証の機会を提供する「ホスティングペイロードサービス」を展開している。

今回の契約の背景として、両社および両社に出資する丸紅の3社は2020年2月、小型衛星放出システムの研究・開発を行う協業意向書を締結している。そして今回の契約では、打ち上げサービスのみならず、将来にわたってビジネス連携を深めることも明記しているといい、衛星のラストワンマイル事業に取り組むD-Orbitと、ロケット打ち上げ事業を提供するISTが相互に協力することで、より低価格で柔軟な宇宙輸送サービスを構築していくとしている。

なお、D-OrbitのVP OperationsであるMonica Valli氏は、「今回の包括契約を通じ、私たちの持つ軌道上輸送やロジスティクスのノウハウを活用して衛星配備の効率化に貢献するとともに、アジアにおける宇宙利用や研究の可能性を広げることを目指す」とのコメントを残している。

またISTでCOOを務める熱田圭史氏は「アジアが抱えるさまざまな課題への対応において宇宙のアプリケーションは必要不可欠で、私たちの協業がその解決に貢献できると確信している」と話している。