NVIDIAは3月18日(米国時間)、TSMCとSynopsysが、次世代の高度な半導体チップ製造の加速に向けて、NVIDIAのコンピュテーショナルリソグラフィプラットフォーム「NVIDIA cuLitho」を活用する形での半導体生産を開始することを発表した。

半導体の製造には、マスクを介して回路パターンを形成するが、微細化が進むにつれて回路パターンの形成が難しくなり、光近接効果補正(OPC)技術の活用など、高度な計算技術を応用して露光プロセス全体をシミュレーションする「コンピュテーショナル・リソグラフィ」の重要性が高まっている。しかし、その実現には膨大な計算時間を必要としており、半導体製造プロセスの中で計算負荷の高いワークロードの1つとされている。例えば、半導体チップ用の一般的なマスクセット作製には、3000万時間以上のCPU計算時間がかかることもあり、半導体工場内に大規模なHPC能力を収めることが求められていたが、GPUコンピューティングを活用することで、350台のNVIDIA H100システムで4万個のCPUシステムを置き換えることができ、コスト、スペース、電力を削減しながら生産時間の高速化を図ることができるようになるとNVIDIAでは説明している。

TSMCでは、2023年よりcuLithoのテストをパートナー企業らと協力して進めてきており、マスク設計時の曲線フローで45倍、より伝統的なマンハッタンスタイルのフローでは60倍近い高速化を実現できることを確認したという。また、Synopsysでは、cuLithoソフトウェアライブラリ上で動作するSynopsysの「Proteus光近接効果補正ソフトウェア」は、現在のCPUベースの方法と比較して、計算ワークロードの高速化を可能とし、このProteus マスク合成製品を活用することで、TSMCのような半導体製造メーカーは、近接補正、補正用モデルの構築、補正済みおよび未補正のICレイアウトパターンに対する近接効果の解析において、高い精度、効率、速度を達成することができるようになるとしている。

なお、NVIDIAはcuLithoプラットフォームの価値向上を目指し生成AIを適用するアルゴリズムを開発したとしており、この新しい生成AIワークフローでは、cuLithoが実現していたプロセスの高速化に加えて、光の回折を考慮したほぼ完璧な逆マスクまたは逆解を作成できるようになり、従来の物理的に厳密な方法と組み合わせた最終マスクの導出により、OPCプロセス全体でさらに2倍の高速化を可能にするとしており、今後の2nm以降の微細プロセス開発における、より斬新なソリューション設計にリソースを割り当てることが可能になるとしている。