東京大学(東大)と早稲田大学(早大)は1月27日、生体材料と人工物を組み合わせたバイオハイブリッドロボット技術を活用して培養骨格筋組織の収縮運動で動く二足歩行ロボットの開発に成功したことを発表した。
同成果は、東大 大学院総合文化研究科 広域科学専攻の金城立来氏(研究当時は修士課程)、同大 大学院情報理工学系研究科の趙炳郁 助教、同 竹内昌治 教授、早大理工学術院の森本雄矢 准教授らの研究チームによるもの。詳細は、米国科学誌「Matter」に掲載された。
近年、生体由来の材料と機械部品を融合して製作されるバイオハイブリッドロボットが注目を集めており、特にロボットの駆動源に筋組織を用いた筋駆動型バイオハイブリッドロボットとして匍匐移動や魚類を模倣したヒレによる泳動などの移動動作が報告されているが、そうしたロボットたちは前に進みながら旋回する、大回りの旋回動作しか行えていなかったとする。そこで、今回の研究ではより細やかな旋回動作の達成を目指して進められたとのこと。
開発された二足歩行ロボットは、2つある足のうちの一方を駆動足、もう一方を軸足に用いることで、ロボットボディの内側に旋回中心を設けることが可能になり、細やかな旋回動作が可能になったとする。
柔軟基板を有するポリジメチルシロキサン(PDMS)製の足、歩行動作を実現するための重り、培養液中で直立姿勢を維持するための浮き、培養骨格筋組織から構成されており、培養骨格筋組織に電気刺激を与えて筋収縮運動を引き起こし、PDMS製の足が屈曲することで歩行動作が実現されたほか、重りが軸足の固定を可能にすることで細やかな旋回動作も可能になったとしている。
実際、ロボット長/回転半径で示される回旋率は、従来ロボットが0.4であったのに対し、同ロボットではその5倍強である2.1を示したとするほか、シミュレーションを通じて同ロボットの二足歩行メカニズムの解明ならびに二足歩行による前進運動と旋回運動も実現するなど、従来のバイオハイブリッドロボットよりも細やかな旋回が可能なことが示されという。
なお、研究チームは今回の研究成果について、筋組織を駆動源とするバイオソフトロボットの開発や、ヒトの歩行メカニズムの理解につながるとしているほか、薬剤添加時の運動改善効果の解析や、薬剤と運動を組み合わせた時の薬剤効能の解析、疾患骨格筋組織を用いた際における疾患時の病態解析などさまざまな状態における運動モデルとして、薬学や医学分野で応用できるともしている。