人機一体は、「2023国際ロボット展」にて、人型重機などの試作機10台を展示していた。多数のロボットが連携しながら作業する様子は、まさに近未来の工事現場。現在、土木建築などの現場では、負荷の大きな作業をまだ人間が行うことも多いが、同社は人間とロボットの協調によって、より安全で快適な現場を目指している。
様々なスタイルの人機が開発中
同社のロボットで共通の基盤となっているのは、バイラテラルのマスタースレーブ技術だ。昨今、AI技術が急速に発展してきたとはいえ、様々な現場の作業を自律で任せるのはまだまだ難しい。そういった状況判断は、操縦席の人間が担当。ロボットには、高所作業など危険を伴う作業や、体力的に辛い作業などをやってもらう。
同社は用途に応じ、様々なラインナップを展開している。「零式人機 ver.1.3」「同 ver.2.0」は、上半身のみのロボットだ。双腕を持ち、人間と同じような両腕を使った器用な作業が可能。2024年に日本信号が製品化し、JR西日本の営業線へ導入する予定で開発が進められている。
別記事ですでに紹介した「零一式カレイド ver.1.0」は、2足歩行が可能なヒューマノイド。等身大のサイズなので、人間が行っている様々な作業の代替が期待される。
そして「零二式人機 ver.1.0」は、今回が初公開だという単腕型のロボットアーム。特徴は、零式人機よりも、さらに大きな力が出せることだ。最大150kgの重量物のハンドリングに対応。こちらもJR西日本、日本信号と共同開発したもので、線路の架線上にある重量物の交換などの用途が考えられているという。
操作は2通りが可能。大きく移動させるときには操縦席から行い、取り付け先を直接確認しながら微調整したいときは、手先のグリップを持って操作することもできる。
橋梁補強工事の切り札となるか?
また「人機GSP ver.1.3」にも注目したい。これは、6本の直動型アクチュエータで6軸制御(3軸移動+3軸回転)を行う、いわゆるスチュワートプラットフォームである。同社はこれを、重量物の位置決めに活用。竹中土木、東北電力ネットワークと共同開発しており、デモでは、橋梁の補強をイメージした作業を披露していた。
橋梁に耐震補強ブラケットを取り付ける作業では、橋梁側のボルトへの位置合わせが必要。この耐震補強ブラケットは500kg~1トンもあるのだが、橋の直下では上からクレーンで吊り下げることができないため、現在はチェーンブロック等を使い、人力で位置を調整しながら、取り付け作業を行っているという。
ボルトが1本だけならまだ差し込みやすいが、何本もあると、位置や傾きをピッタリ合わせる必要があり、なかなか大変。しかし、人機GSPならば、重量物も軽々とハンドリングできるため、まるでレゴブロックでも合わせるような感覚で、作業者が簡単に取り付けることができる。作業の効率化も期待できるだろう。
社会実装を進める竹中土木によれば、橋梁の補強だけでも、まだまだ多数の案件を抱えているという。少子高齢化という進行中の課題もあり、ロボットへの期待は大きい。橋梁の耐震補強だけではなく、クレーンが使えない現場など、用途はたくさんあると考えており、「再来年くらいには現場で使い始めたい」(担当者)とのことだ。