川崎重工業(川重)は8月8日、同社の明石工場(兵庫県明石市)において、双腕自律走行ロボット「Nyokkey」(ニョッキー)による実証実験の様子をプレス公開した。Nyokkeyが行っていたのは、来客に飲み物を届ける、いわゆるパントリーサービス。応接室に入るには、ドアを手で開ける必要があるが、Nyokkeyはそういった動作も実現している。
Nyokkeyはプラットフォームロボットを目指す
Nyokkeyは、同社が開発中のサービスロボットである。大きな特徴は、人間と同じような2本の腕を持つこと。両腕をうまく連携させることで、1本のロボットアームでは難しいような複雑な作業も行うことができる。さらに、車輪による移動機構を搭載。前後のLIDARで自己位置を推定しながら、自律的に目的地へ行くことが可能だ。
同社はNyokkeyを、“プラットフォームロボット”として開発しているという。そのカギとなるのが、この双腕と移動機能である。
人間の社会空間は、当然ながら、人間に都合の良いように作られている。そのため、人間に近いサイズで、人間と同じように移動でき、人間のように動く腕があれば、様々な環境に導入しやすい。たとえば、ビルの中でも、エレベータのボタンを押し、ドアを開けられれば、自由に移動して働けるというわけだ。
もちろん、ドアやエレベータなどは、通信で連係動作させればロボットも使いやすい。おそらく、いずれはそうなるのだろうが、設備側の改修には大きなコストが必要となってしまう。当面、ロボットの社会実装を速やかに進めるには、ロボット側に人間社会の都合に合わせてもらうのが現実的と言える。
現在、少子高齢化による労働力不足が深刻化している。「これをロボットで解決して欲しいというのが社会的な要望。我々ロボットメーカーは、その期待に応えなければならない」と、Nyokkeyの開発を率いる掃部雅幸氏(精密機械・ロボットカンパニー ロボットディビジョン 商品企画総括部 先進技術部長)は述べる。
ロボットはすでに、製造業では一般的になっているものの、そのほかは、医療や物流の分野などで使われ始めたくらい。合計でも全産業の3割程度でしかなく、これを広げていくのが急務だ。まだロボットが普及していないあらゆる業種に参入する。それが、プラットフォームロボットの大きな狙いなのだ。