TechInsightsによると、半導体企業の合併や買収(M&A)案件の契約額は2023年第3四半期終了時点で32億ドルであり、その後も大型M&Aは発生していないことから、通年でも2008年以来の低さになった模様であるという。

このM&A契約額の対象は、半導体関連の企業買収、一部の事業や製品買収、一部の製造工場買収、IP買収などを含み、買収完了時点ではなく、契約発表時点で集計したものとなっている。この低さは、1000億ドル超の買収総額を記録した2015年、2016年そして2020年とは対照的だと言える。2023年はWestern Digitalとキオクシアが合併が発表される可能性があり、それがなされればM&A契約総額は上積みされることが期待されたが、キオクシアの事実上の約15%の株主であるSK hynixの反対などもあり、実現には至らなかった。

2013年から2022年に至る10年間の年間平均M&A契約総額は490億ドルとなっており、2023年のM&A契約総額が桁違いに低いことが見て取れる。

  • 半導体関連のM&A契約金額の年間総額の推移

    半導体関連のM&A契約金額の年間総額の推移。2023年は第1~3四半期(1~9月期)の集計 (出所:TechInsights)

2023年にもっとも大型M&A契約額となったのは、6月のIntelの100%子会社だったオーストリアIMS Nanofabricationの20%株式を米Bain capitalへの売却する案件だった。IMSの関しては、9月の同社株式の10%をTSMCに売却する案件が4番目の契約額の高さに位置づけられている。IntelがIMSに最初に投資したのは2009年で、2015年に買収して子会社とした。IMSはEUVリソグラフィに必須のマスクライターメーカーだが、Intelはその3割の株式を手放したことになる。

2番目に大きなM&A契約額となったは3月のInfineon TechnologiesによるカナダGaN Systemsの買収。このほかInfineonは、10月に超広帯域無線(UWB)用の低電力チップを手掛けるスイス3db Accessも買収している。3番目のM&A契約額となったのは、半導体商社である菱洋エレクトロとリョーサンの経営統合であった。

  • 2023年の主な半導体関連M&A

    2023年の主な半導体関連M&A (出所:TechInsights)