岡山大学は1月25日、介護保険の理解を深めることを目的に、患者が自宅に戻ってからでも自分の都合に合わせて質問ができるAIによる質疑応答システム(AIチャットボット)を開発したことを発表した。
同成果は、岡山大 学術研究院 医歯薬学域(医) 医療情報化診療支援技術開発講座の長谷井嬢准教授(整形外科)、岡山大病院の岩谷美貴子看護・患者サービス担当副病院長兼看護部長、同・総合患者支援センターの野口史子看護師長らの研究開発チームによるもの。
病院での職員による説明は時間が限られており、質問や疑問に十分答えられないことがあるという。特に、保険関係の説明などは難解な部分も多く、地域の拠点病院のような大きな病院だと説明のための専門スタッフが配置されていることもあるが、それでも患者や家族が話を聞きたくて順番待ちをしているようなケースも多々見られる。そこで長谷井准教授は今回そのような課題を解決するため、患者やその家族が自宅からでも自分の都合に合わせて質問できるAIチャットボットを開発することにしたという。
今回は題材として介護保険が選択され、岡山大学病院の岩谷美貴子看護・患者サービス担当副病院長兼看護部長および野口史子総合患者支援センター看護師長へのインタビューが行われ、それをもとにAIチャットボットが開発された。このAIチャットボットは、スマートフォンやPC用のSNSツールである「LINE」を通じて、いつでも利用することが可能で、わからないことを質問すればいつでも回答してもらうことができる。
開発においては、医療従事者や一般のテストユーザー10人が1か月間使用しAIの挙動の確認が行われた。その結果、具体的な質問に対しては、大半の場合で正確な応答が得られることが確認されたという。ただし、質問があいまいな場合には、AIが適切な回答を提供するのに苦労することもあったが誤った情報を提供することはなかったとした。
今回の技術の応用範囲は介護保険に限らず、ほかの医療関連の説明業務にも拡大できる可能性があるとする。長谷井准教授によれば、まずは今年度内に臨床現場においてトライアルとして導入し、それを通じてこの技術の可能性をさらに探求し、改善を加えていくとしている。その結果を踏まえて運用面の修正や改善を行った後、本格的な導入を計画しているとした。
なお、大学病院内での説明業務にAIを導入することは、今後の医療現場での生成AIの活用において重要なステップとなるとし、患者と医療従事者双方にとってより良いコミュニケーションが実現されることが期待されるとした。