Samsung Electronicsは12月19日、ISOCELL Vizionセンサの新製品2種類を発表した。1つはToFセンサの「ISOCELL Vizion 63D」、もう1つはグローバルシャッターセンサの「ISOCELL Vizion 931」である。2製品ともにすでにサンプル出荷を開始しているが、量産時期は公表していない。
消費電力を4割削減しつつ高解像度を実現したToFセンサ
ToFセンサは、放射された光が物体に反射して帰ってくる往復時間を計算することで距離と深度を測定しており、そうした光の往復時間を測定するToFセンサは「直接IoT(dIoT)センサ」と呼ばれる。これに対して同製品は、放射光と反射光の間の位相シフトを測定して周囲を3次元で感知する「間接IoT(iToF)センサ」で、高解像度で正確な深度測定が可能であるため、XRデバイスや顔認証だけでなく、サービスロボットや産業用ロボットにも最適だとSamsungでは説明している。
また、深度センシング画像信号プロセッサ(ISP)を1チップに搭載することで、複数チップを使用せずに3D深度情報を正確にキャプチャできるようになり、従来製品比でシステムの消費電力を最大40%削減できるという。
さらに、3.5㎛ピクセルピッチの1/6.4インチ光学フォーマットを採用。VGA(640×480)画素に対応するほか、QVGA(320×240)の解像度で、最大60フレーム/秒で画像を処理することもできるともしている。加えて、光吸収を強化する裏面散乱技術(BST)による高い量子効率も実現。940nmの赤外光波長で38%としており、光感度の向上とノイズの低減が可能からモーションブラーを最小限に抑えたより鮮明な画質が得られるとしている。
このほか、フラッド(近距離での高解像度)とスポット(長距離)の両方の照明モードをサポートし、測定可能な距離範囲が前モデルの5mから10mへと拡張されたとする。
ダイナミックな動きを歪みなく捉えることを可能にしたグローバルシャッタセンサ
一方のISOCELL Vizion 931は、全画素を同時に捉えることで、動きのある被写体を歪みなく撮影することを可能としたグロバルシャッタを搭載したイメージセンサ。これにより、移動する物体であっても鮮明で歪みのない画像をキャプチャできるため、XRデバイス、ゲームシステム、サービスおよび物流ロボット、ドローンのモーショントラッキングに最適だと同社では説明している。
こちらもVGA解像度で設計されており、XRヘッドマウントディスプレイでの虹彩認識、視線追跡、顔およびジェスチャ検出に対応可能で、高い量子効率も達成しており、850nmの赤外線波長で60%という値を実現したとしている。この性能は、Vizion 63D同様のBST方式に加え、ピクセル間に絶縁層を配置して光の吸収を最大化するフロントディープトレンチ分離(FDTI)の採用により実現したという。
また、単一ワイヤで最大4台のカメラをアプリケーションプロセッサにシームレスに接続できるマルチドロップをサポート。必要な配線を最小限に抑えられるため、システム設計に柔軟性を提供するともしている。