スマートフォン(スマホ)向けCMOSイメージセンサなどを生産するソニーセミコンダクタマニュファクチャリングの長崎テクノロジーセンター(長崎TEC)の生産棟「Fab 5」の最終拡張部分が完成し、竣工式が執り行われた模様である。

今回の拡張によってFab 5のクリーンルーム面積は2022年夏時点から6割増えたが、同社の長崎TECも熊本テクノロジーセンター(熊本TEC)も、もはや拡張の余地のないほど建屋で埋め尽くされている。そのため同社は熊本TEC近くの熊本県合志市に新たに27万平方メートルの土地を取得。近い将来、熊本第2工場の建設を開始する計画を打ち出している。

この動きに呼応する形で、同社のCMOSイメージセンサーの周辺ロジック回路チップを受託生産しているTSMCも既存の熊本工場(JASM第1工場)の隣接地に第2工場の建設を2024年より開始する見込みである。

ソニーはイメージセンサのシェアを42%(2022年)から2025年にも60%へと引き上げる挑戦的な計画を掲げている。しかし、直近のイメージセンサ事業の利益が下落している。理由の1つは、米国政府の対中半導体輸出規制の影響で、米国製半導体製造装置を使って製造されるソニー製ハイエンドイメージセンサが、大口顧客の1社であったHuaweiに出荷できなくなったためである。

もう1つの理由は、2023年5月に発表したソニーの新型スマホ「Xperia 1 V」や同年9月に発表されたAppleの「iPhone 15」に搭載された新型イメージセンサである2層トランジスタ画素積層型CMOSイメージセンサの製造歩留まりが低迷し、その対策に出費を強いられたことである。

ソニーは、Huaweiに代わって小米(シャオミ)やOPPO(オッポ)など、エンティティリストに載っていない中国スマホメーカーへの販売を拡大するほか、車載やセキュリティなど、スマホ以外の分野への売り込みを強化しようとしているが、そうした市場にもSamsung Electronicsやonsemi、OmniVisionなどの競合がひしめき合っており、しのぎを削っている状況である。