首相官邸は12月21日に、主要閣僚や官民の代表者多数を集めて開催された「国内投資拡大のための官民連携フォーラム」にて、岸田総理大臣が同日、横浜市に先端半導体パッケージング研究拠点の設立を表明した韓Samsung Electronicsならびに、アオイ電子が先端半導体パッケージの量産化に向けた国内投資について言及したことを明らかにした。

それによると岸田総理大臣は「国内企業はもちろん、世界の企業や、投資家からも、日本国内の投資に関心が集まっている。本日も、Samsungから半導体関連の新たな先端開発投資の表明があったという報告を受けた。国内投資によって全国に魅力的な仕事が生まれることを歓迎する。可処分所得の上昇に伴って消費が生まれ、そして、再び国内投資につながっていく。こうした実感が積み重なって、今日より明日がより良いと感じられる経済社会を、国内投資を通じて実現していく」と述べたという。また、国内投資の一例として、「中堅企業であるアオイ電子の取組のように、国内、特に地方で投資を行い、地域経済を牽引(けんいん)する存在である中堅企業が、持続的な賃上げに貢献できるよう、支援を強化していく」と述べたともしている。

アオイ電子が350億円投じて国内に純国産OSAT工場設置へ

アオイ電子は、同フォーラムにて、今後4年間で350億円を投資し、日本での後工程の生産受託工場(OSAT: Outsourced Semiconductor Assembly and Test)を設置する計画を披露した。現在、同社は世界のOSAT売上高ランキングトップ22の中に唯一入っている日本企業であるが、その順位は18位にとどまっている。同社の売上高は、業界トップの台ASE Technologyの1/30ほどだが、純国産のOSATとして存在感を高めていくことで、世界の大手OSATとの差を縮めたいとしている。

同社は同フォーラムにて、政府に対する要望として、各省一体となった中堅企業支援の強化ならびに、わかりやすい支援メニューなどの情報発信を要望したという。

チップレットを実現する中工程に注力

アオイ電子が注力しようとしているのは、チップレットに注目が集まりつつある近年、半導体前工程(ウェハ処理工程)と後工程(アセンブリおよびテスト工程)の中間に位置づけられるようになってきた「中工程(チップレットをPSB(Pillar Suspended Bridge)などで相互接続する工程)」と呼ばれる工程である。

チップレットの集積技術について同社は、東京工業大学や大阪大学などと共同研究を行ってきた。2022年10月には東京工業大学、大阪大学、東北大学が中心となり30近い企業が参加する形で「チップレット集積プラットフォーム」が発足したが、そこにも加入して、ほかのメンバー企業とともに市場に向けた新たなチップレット技術の提案を目指しているとのことで、すでに国際的な学会発表の実績があるほか、2024年もすでに3つの学会での発表に向けて論文を提出済みであるとしている。同社では、これらの研究成果を基に、顧客にデータを提供したり、意見を聞いたりして実用化を目指しているが、国内メーカーより海外メーカーからの反応の方が早いという。

なお、経済産業省は、11府省庁連名で取りまとめて2月22日に公表した「国内投資促進パッケージに沿ってアオイ電子を支援していくとしている。

  • 「国内投資拡大のための官民連携フォーラム」におけるアオイ電子の提出資料
  • 「国内投資拡大のための官民連携フォーラム」におけるアオイ電子の提出資料
  • 「国内投資拡大のための官民連携フォーラム」におけるアオイ電子の提出資料 (出所:首相官邸)