キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)は、同社が国内独占販売契約を締結しているSigrayが手掛ける最高空間分解能300nmを実現したナノX線CT装置「EclipseXRM-900」を、2023年12月15日より発売したことを発表した。
ナノX線CT装置「EclipseXRM-900」の開発背景
生成AIや自動運転、メタバースなど膨大なデータ処理に必要な演算能力を向上させるため、半導体プロセスの微細化が進められてきた一方で、昨今ではプロセス微細化とともに、チップレットと呼ばれる集積技術による性能の向上が図られるようになってきた。
しかし、チップレット技術を用いた半導体部品は、金属材料と高分子材料(樹脂材料)が3次元の積層構造になっており、これらに含まれる材料はX線吸収率が大きく異なるため、故障解析や研究開発の非破壊分析において高精度で測定することが困難な場合があったという。
最高空間分解能300nmで高精度測定が可能な「EclipseXRM-900」
今回発売された「EclipseXRM-900」の特徴は、Sigrayが特許出願中である独自の装置機構によって最高空間分解能300nmを実現している点や、最大100mmΦまでのサンプルにおいてサブミクロンレベルの空間分解能を達成している点などが挙げられるという。
こうした特徴により、X線源までの距離を長く取る必要がある大きなサンプルやin situセルにおいても、高い解像度での撮像が可能であり、積層化された半導体の内部構造などでも非破壊で高コントラストな可視化を実現できるとしている。
また、最新のX線源と検出システムが導入されているため、高倍率対物レンズを用いることなく300nmの空間分解能で測定でき、より効率のよいデータを取得することができるともしている。
今回のEclipseXRM-900の国内販売開始を機にキヤノンMJでは、X線分析のニーズの高まりに応えていくことを目的に、これまで困難であったアプリケーションの分析を実現する商品ラインアップの拡充を図っていくなど、分析ソリューション事業を拡大していきたいとしている。
なお「EclipseXRM-900」の価格は装置構成などによって変わるが、おおむね2~3億円ほどとしており、キヤノンMJでは、今後5年間で50台以上の販売を目指すとしている。