ムーアの法則を維持し、インターコネクトのより大規模なスケーリングを可能にするため、半導体エコシステムはたゆむことなく様々な材料の可能性を探求しています。
タングステンは、ほぼ四半世紀にわたりインターコネクト・メタルとしてNAND、DRAM、ロジック/ファウンドリの中間工程(Middle of line)用途に選択されてきました。しかし現在、スケーリングの拡大から生じる要求は、タングステンでできることの限界を超えようとしています。様々な金属が検討されていますが、モリブデンは特に有望な候補です。
原子レベルの寸法制御を必要とする先端半導体製造において、モリブデンはタングステンに代わる最も適した材料として台頭しつつあり、業界に大きな変化をもたらそうとしています。
なぜモリブデンなのか?
最適な材料の選択には考慮すべき要素がたくさんあります。中でも抵抗率は最も重要な要素の一つです。つまり、金属がどれだけ電流を流しやすいかということです。
モリブデンの採用が進む理由には、まずその薄膜抵抗率があげられます。金属接点、ビア、ラインなどのデバイスのスケーリングには、薄膜の成膜が必要です。薄膜として成膜された状態では、すべての金属膜はバルク(または厚膜)時の既知の値と比較して抵抗率が増加します。一部の金属材料では、電荷キャリアの平均自由行程が長すぎるため、この現象がより顕著に表れます。
成膜される形状の寸法に近い平均自由行程の方が、長いものよりも適切なのです。この性質がモリブデンをタングステン、コバルト、銅、その他多くの候補よりも、先端デバイスに適したソリューションとしています。
現在、ほとんどすべてのメタライゼーション工程で配線材料は、絶縁膜への金属の拡散を防ぎ、リークを防止するライナー膜上に成膜されます。代表的なライナー材料には、窒化チタン、窒化タンタル、窒化タングステンなどの遷移金属の窒化物が用いられます。これらの薄膜は純粋な金属と比較して抵抗率が高く、薄膜スタックの抵抗を増加させます。しかしモリブデンは誘電体に対する拡散性をほとんど、あるいは全く持たないため、バリアライナーを必要としません。
モリブデンをこの技術転換の中心としている重要な性質はこれだけではありません。モリブデンは原子層堆積法(ALD)で成膜できるため、デバイスの形状により沿った成膜をすることができます。
また、フッ素を使用しないプリカーサー(前駆体)を用いて成膜できるため、タングステンを使用した場合にフッ素が引き起こしかねないデバイス不良を避けることができます。
さらなる利点として、モリブデンではエッチバックやCMPによる平坦化を使用したインテグレーションが容易であるということがあげられます。
今後について
これらすべての特性を考えると、モリブデンはあらゆるデバイスのメタライゼーション要件を満たす有力な候補といえます。実際、ほぼすべての主要半導体メーカーで、そのNAND、DRAM、ロジック用途の製品化に向けたさまざまな検証段階にあります。
Lam Researchはモリブデンへの移行の加速をサポートします。実は20年以上前にタングステンALDを導入したパイオニアであり、その後、2D NANDから3D NANDへの移行を可能にするALDプロセスを開発した実績も有しています。そうしたLamのALTUS製品ファミリは、長年にわたって培ってきたツールアーキテクチャと、磨き上げられてきた大量生産における実証済みのプロセスによって、タングステンALDから学んだ教訓を活用し、モリブデンを幅広く採用する道を開くことが期待されています。
本記事はLam Researchが「Semiconductor Digest」に寄稿した技術記事を翻訳したものとなります