経済産業省傘下の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は10月30日、ドイツで行った大規模ハイブリッド蓄電池システム実証事業の成果と今後の展望についての説明会を開催し、近いうちに日本でも不可欠になる電力需給調整技術とその市場についての展望を示し、その実現を促進することの重要性を訴えた。

この実証事業名は「エネルギー消費の効率化等に資する我が国技術の国際実証事業」で、事業期間としては2017年2月から2020年2月末にかけて実施された(システムそのものはその後も稼働中)。実証場所はドイツ北部の北海に面しているニーダーザクセン州のファーレル変電所で、ニーダーザクセン州は風力発電所などの事業所の数が多く、火力や水力、原子力などの発電所の基幹発電系統に対して、風力発電所などの再生エネルギー系からの電力需給調整市場へのアクセスと、その技術確立を目指した実証試験の場として選定された。

  • NEDOの実証試験設備の概要
  • 大容量ハイブリッド蓄電池システムの概要
  • 図1 ドイツのニーダーザクセン州に設けられたNEDOの実証試験設備の概要と大容量ハイブリッド蓄電池システムの概要 (出所:NEDO配布資料),A@NEDOの実証試験設備の概要

  • 需給調整システムの模式図

    再生可能エネルギーの利用拡大に向けた電力系統システムにおける需給調整システムの模式図 (出所:NEDO配布資料)

NEDOの担当部門であるスマートコミュニティ・エネルギーシステム部は「この事業の実際の実施期間は2019年上半期から2020年上半期にかけて」と説明するほか、「この実施期間には残念ながらドイツの電力需給調整力市場の1次落札価格(PCR)が低迷したが、この実施期間後も当該システムは運用が続けられており、その結果、2020年下半期から2021年度、2022年度と1次落札価格が上昇したこともあり、採算性の見通しが出てきた」と説明している。

筆者注(1):PCR(Primary Control Reserve:1次調整力)は実需要タイミングでの需要調整メカニズムに対して、自端周波数の基準値からの偏差に応じて、自動応答30秒以内で発動するPCR供給。SCR(Secondary Control Reserve:2次調整力)は実需要タイミングでの需要調整メカニズムに対し、送電事業者(TSO)の指令に従い、自動応答5分以内で発動するSCR供給

日本でも、太陽光発電所で設置されるようになってきたほか、将来的には大容量蓄電池を搭載した電気自動車(EV)の増加に伴い、多数のEVがほぼ同時に充電を行うといった電力使用市場ができ上がる可能性も高く、「日本でも再生エネルギー市場との電力需給調整技術とその市場を確実に構築する必要性が高まっている。こうした近未来の電力需給調整技術とその市場形成の土台となる実証試験に、ニーダーザクセン州でのハイブリッド蓄電池システム実証事業が結果的になりつつある」と説明する(日本国内でも、2024年度から電力の需要調整市場が始まる見通しが高いと推測されている)。

2017年2月から実施されたドイツでの国際実証事業では、当初は日立化成がプロジェクトマネジメントとリチウムイオン電池システムの供給、日立パワーソリューションズがシステム・インテグレーション、日本ガイシがNAS電池システムの供給をそれぞれ担当していたが、その後、日立製作所が子会社であった日立化成が昭和電工(現レゾナック)に売却されたため、2023年時点ではリチウムイオン電池システムの供給はエナジーウィズが担当しているとする。

筆者注(2):2020年4月に日立化成は昭和電工の連結子会社となり、同年10月に昭和電工マテリアルズに社名を変更。その日立化成のリチウムイオン電池などを扱う蓄電デバイス・システム事業部門が子会社として独立する形でエナジーウィズ(東京都千代田区)が設立された

電力の需給調整市場が形作られると、当然のことながら利益を上げて事業性を確保することが求められることとなる。今回の実証事業では、リチウムイオン電池とNAS電池のハイブリッド蓄電池システムの設置などの初期投資と運用費用(人件費や保守費、稼働させる電気代、保険費用など)を差し引いて利益を計上するためのノウハウの獲得確立が目指されており、システムの制御手法や運用面での工夫、各電池の寿命の延命化などを確立していくことで、こうしたシステムの経済性向上を目指したいとしている。

2023年11月7日訂正:記事初出時、エナジーウィズの本社所在地を埼玉県深谷市と誤って記載しておりましたが、正しくは東京都千代田区となりますので、当該部分を訂正させていただきました。ご迷惑をお掛けした読者の皆様、ならびに関係各位に深くお詫び申し上げます。