2023年10月17日から20日まで幕張メッセで開催されている「CEATEC 2023」で、パナソニック インダストリーは、将来の社会変革に対応・貢献するための幅広い製品群を紹介。高度情報化社会の実現に寄与する透明導電フィルム「FineX(ファインクロス)」や、宇宙空間に約3カ月間滞在した同社の電子材料サンプルなどを展示している。

  • CEATEC 2023のパナソニック インダストリーブース

    CEATEC 2023のパナソニック インダストリーブース

透明かつ低抵抗なフィルムの活用例を多数展示

パナソニック インダストリーのFineXは、フィルムに約2μmの金属配線をメッシュのように張り巡らせることで、高い透明性と導電性を兼ね備えた製品で、その特徴として抵抗値の低さがあるという。

  • 透明導電フィルム「FineX」

    透明導電フィルム「FineX」

従来工法では、金属配線の厚みを変えることができなかったため、配線を細くするほど抵抗値が高まってしまう点が課題だった。しかし同社は、厚み方向を変化させる独自工法を開発し、断面積を確保して抵抗値を低く抑えながらも、配線を細くすることに成功。これにより、人間の目で捉えることが難しい2μm程度の配線を実現し、透明性の高さと抵抗値の低さを両立させることができたとする。

今回のブースでは、このFineXを使用した応用アプリケーションを複数展示。車載分野での利用イメージとしては、熱源であるエンジンが搭載されないEV(電気自動車)において、フロントガラスや窓などを温める役割を同製品が担うことが期待されるといい、そうした活用によりヒーターユニットの代替として利用できる可能性があるとしている。

  • EV領域での活用を見据えたデモ。通常のフロントガラス(右)は曇りが発生しているが、FineXにより温めたフロントガラス(左)では曇りは発生していない

    EV領域での活用を見据えたデモ。通常のフロントガラス(右)は曇りが発生しているが、FineXにより温めたフロントガラス(左)では曇りは発生していない

またその他のユースケースとして、FineXは電磁波シールドとしての機能も有していることから、電磁波を漏れ出させないために板金などが用いられている電子レンジについて、透明フィルムで置き換えることで“温めている間も中が見える電子レンジ”が実現できるという。ブース担当者によれば、すでに電子レンジのメーカーとも共同で製品開発を進めているとのことだ。

  • 電磁波シールドとして用いることで“中が見える電子レンジ”が実現できるとする

    電磁波シールドとして用いることで“中が見える電子レンジ”が実現できるとする

実際に宇宙空間を旅した製品も展示中!

またパナソニック インダストリーは、主力製品の1つとして電子材料を提供しており、独自の樹脂設計・配合技術を活用した多層基板材料「MEGTRON」は、世界でもトップクラスのシェアを誇る。しかし同社電子材料事業部の担当者は、現時点でパナソニックグループが材料事業を展開していることはあまり知られておらず、人材確保も見据えて認知を広げていくことを目指しているという。

そうした中で2023年には、Space BDが主導し、JO1が公式アンバサダーを務めた宇宙利活用プロジェクト「スペースデリバリープロジェクト」に参加。MEGTRONをはじめとする製品群のサンプルを提供し、国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」において、宇宙空間に曝露させたという。そして約3か月の宇宙滞在を経てサンプルは地上に帰還し、現在はパナソニック インダストリーにて詳細な分析が進められている。

ブース担当者によると、基板材料製品はすでに宇宙分野で使用されているものの、実際の宇宙滞在でどのような変化が起こっているのかはわかっていなかったという。しかし今回宇宙に曝露されたサンプルは、1次評価の結果、電気特性・耐熱性・外観の面で打ち上げ前との変化は認められなかったとのこと。なお今回のブースでは、実際に宇宙空間に曝露されたサンプルも展示されている。

  • 宇宙空間への曝露実験で使用されたサンプルの内訳

    宇宙空間への曝露実験で使用されたサンプルの内訳

担当者は「今後は基地局を宇宙に展開するなど、宇宙空間における通信技術の利用が広がっていくことが想定されるため、そこでの利用に向けた開発を進めていく」と話した。