米Denodo Technologiesは9月、TPGが同社に3.36億ドル投資することを発表した。同社は資本を新たに調達したことで、何を目指すのか。米Denodo Technologies CEO兼FounderのAngel Vina氏、CFOのDaniel Lender氏、Denodo Technologies リージョナル・バイスプレジデント&ジャパン・ゼネラルマネージャーの中山尚美氏に話を聞いた。

  • 左から、米Denodo Technologies CFO Daniel Lender氏、同 CEO兼Founder Angel Vina氏、Denodo Technologies リージョナル・バイスプレジデント&ジャパン・ゼネラルマネージャー 中山尚美氏

マーケティングと人員にさらなる投資を

同社はこの6年、HGGCから投資を受けて成長を遂げてきたことから、Lender氏は、「当社は6年間堅実に事業を進めてきたので、本来、追加の投資は必要なかった」と話を切り出した。

しかし、多くの投資会社が同社に興味を持つ中、TPGから投資を受けたことで、「この機会にバランスシートを強化し、将来に備える。今回の資金投資はDenodoを成長させていくために重要」とLender氏は話す。

同社がソリューションを投入しているデータマネジメント市場は250億ドル規模への成長が見込まれており、それは投資会社としてもうま味があるといえる。

Lender氏は同社がここまで成長した背景には、プロダクトの良さがあるとして、プロダクトに投資していくと話した。

一方、Lender氏は「新たな資本を調達したので、マーケティングの活動を拡大し、日本向けのローカライズに対し追加で投資する。加えて、パートナーエコシステムへの投資も重視している。パートナーと共同で、Denodoを使ってもらうためのプラクティスを構築する。技術側の人員を中心とした人員増に向け大きく投資する」と語った。

国内ではブランドアウェアネスの向上を目指す

Denodoの収益のうち、アジアが占める割合は13%であり、中でも日本は前年比70%増と大きく成長しており、期待を集めている。日本における活動について、中山氏は次のように説明した。

「海外は直接販売を行っているが、日本では、SCSKやNTTデータといった大手ベンダーと組んでおり、パートナーエコシステムを作っていく。当社のソリューションはDX(デジタルトランスフォーメーション)にマッチしている」

ただし、「ソリューションのクオリティは高いが、ブランドアウェアネスが弱いので、強化してく」と中山氏。既にイベントへの参加、ユーザー会の創設などに取り組んでいるが、「『データマネジメント』『データ仮想化』といえばDenodo」と想起されるよう、ブランドの認知度の拡大を目指す。

次のバージョン9では、LLMを搭載してChatGPTが利用可能に

そして、Vina氏は「R&Dにもかなり投資する計画。R&Dを進めることで、企業が抱えるデータマネジメントにまつわる課題を解決する」と話す。

Vina氏は、同社のデータマネジメントプラットフォームにおいて、コネクティビティが重要と述べた。そのため、さまざまなデータストレージ、データを処理しているプラットフォームとの連携をさらに拡大していく。

パフォーマンスの改善としては、データクエリの実行の性能を高めている。最近は、MPPエンジンをプロダクトに組み込んだが、これからもさまざまな機能を追加していくという。

テクノロジーに詳しくないビジネス部門のユーザーがデータを処理できるような機能も提供する。「データ利用の履歴に基づいて、リコメンデーションやトレンドを提示する機能を提供する」(Vina氏)

来年に提供予定のバージョン9ではLLMを搭載し、ChatGPTを用いてやり取りすることを可能にする計画だ。中山氏は「日本では、生成AIに興味を持っている企業が多い。バージョン9では、SQLを使わずにデータを扱えるようにする」と話す。

さらに来年には、マネージドサービスモデルの提供が予定されている。Vina氏は「マネージドサービスなら、ITチームを持たない企業でも利用してもらえる。大規模企業は2万組織と言われているのに対し、中堅・中小企業は5憶と言われている。日本は3ケタ成長も狙えるのでは」と、日本市場に対し大きな期待を寄せていた。