2023年10月17日から20日まで幕張メッセで開催されている「CEATEC 2023」で、パナソニックグループはコロナ禍を経て5年ぶりにブースを出展。同社が掲げる長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」(PGI)の達成に向け、CO2排出量削減に貢献する技術を紹介している。
CO2排出量削減に向けた取り組み・技術を展示
パナソニックグループは長期環境ビジョンとして掲げるPGIの中で、自社の事業活動に伴うCO2排出量を2030年までにゼロにすること、そして2050年に向けては、現在の全世界でのCO2排出量(約330億トン)の約1%にあたる3億トン以上の削減貢献インパクトを創出することを目指している。
その取り組みの一部として同社は、各事業拠点での使用電力を100%再生可能エネルギー(再エネ)でまかなう「RE100ソリューション」の実現を目指している。この取り組みでは、太陽電池や蓄電池に加えて5kWタイプの純水素型燃料電池を使用。電力需要や設置場所、天候などの外部環境に合わせて3種類の電池を高度に連携制御するエネルギーマネジメントシステム(EMS)を用いて、安定的に再エネを供給するという。
パナソニックではこのRE100ソリューションについて、滋賀県草津市の実証施設「H2 KIBOU FIELDでの検証を実施中だといい、燃料電池工場の製造部門の全使用電力をまかなうとともに、3電池による最適な電力需給運用の実現に向け、技術開発を進めるとする。
また同じエネルギー面での取り組みとしては、太陽光発電によってつくった電気を電気自動車(EV)や蓄電池に貯蓄し、停電時などにはEVから住居への送電を行うなどして高効率な電力使用を実現する「V2H蓄電システム」についても紹介している。
EVについては、パナソニックグループ各社が保有する広範な車載デバイスおよびソリューションを集結させたEV模型も展示。同社グループ企業(パナソニック インダストリー・パナソニック エナジー・パナソニック オートモーティブ)が手掛けるおよそ60の製品を集め、EVの中でどのように用いられるのかを見ることができる。
CEATEC AWARD準グランプリにも輝いた“発電するガラス”とは
CO2排出量削減に寄与する技術としては、パナソニック独自の材料技術やインクジェット塗布工法を用いることで、発電層をガラス基板上に作成した「ガラス建材一体型ペロブスカイト太陽電池」も展示している。
CEATEC AWARDのデバイス部門で準グランプリを受賞した同製品は、30cm角の実用サイズでのモジュールで17.9%という高い光電変換効率を達成しており、“発電するガラス”としてさまざまな建築物への適用を目指しているとのこと。太陽電池の塗布割合によって光の透過度を調整することもできるため、窓ガラスの足元部分のみ透過度を下げて発電効率を確保するなど、ユースケースに応じた利用が可能な点が強みだとする。
さまざまな植物廃材を再利用できる再生素材「kinari」
サステナブル素材技術としては、セルロースエコマテリアルの「kinari」を展示。同材料は従来の石油由来樹脂とほぼ同じの物性を持ちながら、最大で約85%のセルロースを含む点が特徴で、間伐材や廃紙、コーヒーかすなどさまざまな植物由来廃材を活用できるのもユニークなポイントだという。
kinariの物性は従来素材と大きく変わらないため、食器をはじめとする薄さやデザイン性が求められる用途にも利用が可能。すでに京都府福知山市の小中学校では、地元で生じた間伐材由来のkinariで作られた食器を学校給食で活用している事例もあり、現在はその認知や利用の拡大を進めている最中だとする。
なお現在のkinariは、約85%を占めるセルロースのほかに、15%ほど石油由来のつなぎ樹脂を使用している。しかしブース担当者によると、この部分については改良に向けた技術開発が進んでいるとのことで、植物由来100%素材の実現や生分解性樹脂の開発など、最終的には石油由来樹脂を用いない素材の創出に向けて動いていくとしている。
CO2が植物の成長促進剤の原料になる?
またパナソニックは、空気中のCO2を原料として、光合成微生物であるシアノバクテリアを活用することで、農作物の成長を刺激・補助する成分を合成する「バイオCO2変換技術」も開発している。
同社が独自開発したシアノバクテリアは、光を当てて空気を送り込むと、光合成によりCO2をもとにして生体分子を分泌する。この分子にはエネルギー代謝を活性化させることで植物の成長を助ける効果があるといい、それらを回収して作物の葉にかけて使用することで、単位面積当たりの収穫量増加に貢献するとする。
現時点では、ホウレンソウ・トマト・トウモロコシ・ダイズなどの農作物で成長促進効果を確認できているといい、「作物により程度のばらつきはあるものの、農家の方が実感できるほどの効果を出せる技術であることは確認している」と担当者は語っており、今後は全国の農地で使用しながらその効果検証を進めていくとしている。