京都大学(京大)は9月29日、ホテル・レンタカー・美容院などさまざまな業種における実際のブッキングカーブ(予約曲線)を収集し、その中に普遍的な数理法則が成立することを発見したと発表した。

  • 今回の研究のコンセプト図

    今回の研究のコンセプト図(出所:京都大学)

同研究は、京大大学院 情報学研究科の梅野健教授、同・新谷健社会人博士課程学生(研究当時)らの研究グループによるもの。詳細は、英オンライン総合学術誌「Scientific Reports」に掲載された。

一般に、ホテルやレンタカーなどの予約データは非公開であるため、金融市場における株価などの価格と異なり、業界横断的な予約パターン、すなわちブッキングカーブの調査解析を行うことは困難だった。

そこで研究チームは、変動価格制(ダイナミックプライシング)を研究する過程で、ホテルやレンタカー、美容院といった異なる業種から、実際の顧客の予約購買データを提供してもらい、具体的なホテル名などの匿名化を条件に、予約購買データの公開を行うことが可能になったとする。

研究チームによると、今回のように複数業種の予約購買データを公開することは世界でも類を見ないケースであり、これらの膨大な予約曲線の平均を考えることで、指数法則という新たな数理法則の発見が可能になったとのこと。また論文内では、実データの結果だけでなく、なぜ平均的な予約曲線が指数法則に従うのかという数理的な背景についても明らかにしたという。

今回発見された数理法則は、業種や市況によらず成り立ち、指数法則を特徴づけるパラメータによって、ビジネス環境内での競争力、顧客の特徴といった、通常数値化することが困難な特性を定量化する新たなマクロ指標を構築できる可能性を示すとのこと。この知見により、変動価格制の価格決定が公正であるか否かを、数理法則を基準にして評価することが可能になったとする。

今回解明された予約曲線の指数則を基にした汎用数理則に基づく変動価格制の具体的アルゴリズムは、その普遍性から、今後は鉄道などの社会インフラ利用における最適な需給調整の実現や、物流・建築業界における2024年問題の抜本的解決など、社会のさまざまな分野で応用されることが期待されるとしている。