鹿島建設は、水平位置や中心位置となる基準線を書き出す建築工事に不可欠な墨出し作業を、全自動かつ高精度に行うロボットプリンター「ロボプリン」を開発したことを9月26日に発表した。

  • ロボットプリンター「ロボプリン」

    ロボットプリンター「ロボプリン」(出所:鹿島)

基準墨(親墨)などの墨出し作業は、建築の各作業の開始前に完了している必要があり、夜間や早朝などに行われることも多いため墨出し工の負担となっているほか、年々墨出し工の労働者数は減少傾向にある一方、建設需要の高まりもあり、墨出し工の不足が懸念されるようになっており、墨出し作業の省人化・ロボット化が求められているという。

こうした建設工事にかかる課題を受けて、鹿島はロボプリン開発に着手。読み込んだ施工図面データをもとに、基準点に設置した自動追尾トータルステーションによって高速制御することで、計測値±約1mm以内の精度で実寸大の連続線や文字を床面にプリントするなど、全自動で墨出し作業を行う仕組みを構築することに成功したとする。

ロボプリン本体のサイズは直径350mm、重さ15kg程度と小型かつ軽量で、付属品を含め専用キャリーケース1つに格納できることから、現場間の移動や現場内における階をまたぐ移動も容易だという。

また、車輪には全方位移動型車輪(オムニホイール)を採用したことで矩形線なども無駄な動作なくプリントすることができるなど、基準墨から仕上げ墨まで幅広い種類の墨出しに対応しているとする。

操作はスマートフォンやタブレットなどのデバイス機器のブラウザ上で行い、一般的なトータルステーションと連携することが可能。利用開始までの準備時間は、基準点へのトータルステーションの設置を含め10分程度と、容易に導入でき、かつ誰でも簡単に操作ができる点もポイントだとしている。

  • スマートフォンやタブレットで簡単に操作できる

    スマートフォンやタブレットで簡単に操作できる(出所:鹿島)

鹿島は現場へのロボプリン導入を進めるため、神奈川県小田原市にある同社の機械技術センターで実証を行っており、墨出し工が作業する場合と同等量に相当する墨出しを、同じ時間量で全自動で行えることを確認。ロボプリンの併用により、墨出し作業の生産性を約2倍に向上できることを確認したという。

なお同社は、「作業の半分はロボットと」をコアコンセプトの1つに掲げ、各種ロボットの導入による現場の生産性向上に取り組んでいる。今回の成果を受けて、複数の建築現場でのロボプリン導入も開始しており、今後もICTを活用したロボット技術の開発と現場管理手法の革新を進め、より魅力的な建築生産プロセスの実現を目指すとしている。