先日、シンガポールでTeradataはカンファレンス「Possible」を開催した。その際、同社のPresident and CEOのSteve McMillan(スティーブ・マクミラン)氏は、キーノートにおいて「信頼できるAIのためには“データの調和”が不可欠である」と述べていた。キーノート後に同氏へのインタビューの機会を得たので、ビジネスの概況やAIに関する質問をぶつけてみた。

生成AIはデータアナリティクスの機能を加速する

--上期を振り返ったビジネスの概況について教えてください。

マクミラン氏(以下、敬称略):データアナリティクス市場で当社は勢いのある成長を続けています。モルガンスタンレーのレポートでは、企業が投資を望む領域の上位として「サイバーセキュリティ」「クラウド」「データアナリティクス」「AI」を挙げています。AIは昨年まで7位でしたが、今年は俄然注目が集まっています。

  • 米Teradata President and CEOのSteve McMillan(スティーブ・マクミラン)氏

    米Teradata President and CEOのSteve McMillan(スティーブ・マクミラン)氏

当社における上期のビジネスは順調に推移しています。お客さまの環境をクラウドに移行する支援を行い、ハイパースケーラーが提供しているモダンなサービスを活用してもらえるようにするとともに、新しいユースケースを創出し、ユーザー/従業員/サプライチェーンパートナーなども含めて、体験の差別化につなげています。

グローバルにおいて、マクロ経済的な低調はありますが、当社はDX(デジタルトランスフォーメーション)やクラウド移行によるデータアナリティクスを支援しており、企業は実際に成果を得られるAIを活用したいと考えています。

--データの調和なくして、信頼できるAIにはなり得ないと話していましたが、もう少し詳しく説明してください。

マクミラン:信頼できるデータが組織内に存在していることが非常に重要だと考えています。

信頼できるデータにはデータガバナンスやデータ管理などが必要です。多くの企業ではデータを冗長的に持っており、組織全体でデータガバナンスを保たなければデータの調和が崩れてしまい、信頼性も損なってしまいます。

例えば、金融サービスを提供する業界は非常に規制が強く、金融商品を顧客に提案する場合、倫理的かつ責任を持った形で行わなければなりません。そのため、規制当局では、どのような形で商品を提案したのかということを証明するためにデータガバナンスが必要となります。

当社ではデータガバナンスを担保するためのツールや機能を提供し、信頼できる質の高いデータを扱うことを支援しているほか、データリネージにより履歴を把握することで責任を持てるようにしています。

そのため、当社の考えでは倫理的で責任を持ったAIが一般的になる必要があり、しっかりとしたデータがない限り、AIはただの人工的なものにしか過ぎません。データガバナンスとデータリネージが重要になります。

--生成AIについては、どのようにお考えですか?

マクミラン:先日、ユーザーの大手銀行と議論した際は、生成AIはデータアナリティクスの機能を加速するだろうという話になりました。

LLM(大規模言語モデル)への関心は大きいもので、場合によっては中規模の言語モデルを用いて特定のビジネス成果を求めたいという話もありました。必ずしもインターネット全体から情報を取得しなくてもいいということです。

当社はターゲットを絞った生成AIのユースケースで対応し、その中で企業データを活用することには強みがあり、大きな付加価値を提供することができると考えています。

また、グローバルのトップ企業各社が生成AIやLLM、AIなどを環境に導入していくと思いますが、導入しない企業は後れを取ることになるでしょう。競争力が落ちると言ってもいいかもしれません。

多くの企業が社内のデータにアクセスしたいと考えますが、注意しなければならないのはお客さまやサプライヤーの保護に加え、競争力を持った差別化もAIのモデルをベースに実現する必要があります。

今後のビジネス展開

--下期に向けて、どのように自社の収益を確保しようと考えていますか?

マクミラン:当社は数年前に考え方を180度転換しました。5年前に、当社はすべてのデータを社内に置き、当社のエコシステムで管理することを標榜していました。

ただ、現在はどのような組織でもデータがデータストアやクラウド、オンプレミス、データセンターなどに存在しています。そのため、すべてのデータにアクセスできるようになっていることが重要です。

お客さまはデータを冗長化させるために支払う必要はなく、最終的にすべてのデータをどのように活用したのか、という観点で支払いをしてもらいます。ビジネスモデルはお客さまが目指すところに合わせています。

下期はお客さまに当社のソフトウェアを活用してもらい、ビジネスの成果につなげてもらいたいと考えています。製品ロードマップ、技術戦略としてはお客さまのさまざまな課題に対応して、すべてのデータにアクセスし、意味のある結果を引き出してもらうことを支援します。

パートナー各社とも、多様なユースケースをお客さまに紹介していきます。日本のお客さまは保守的な傾向があり、クラウド上で行うことに躊躇している側面があります。

そのため、当社はオンプレミスのテクノロジーに注力しており、本来の意味でのハイブリッドでオンプレミスとクラウドの調和がとれた形でビジネス上の成果につなげてもらいます。技術開発はパートナーと行いつつ、成果としてお客さまに何が提供できるのかという点が下期の成功につながると考えています。

--CEOとして、現在の優先事項を教えてください。

マクミラン:当社はオンプレミスのハードウェア企業として認知されてきたという経緯もあり、ある意味エンタープライズデータウェアハウスを発明したと言っても過言ではありません。

昨今では、テクノロジープラットフォームの企業としてSaaS(Software as a Service)をマルチクラウドの環境で提供しています。マルチクラウドの接続性を、企業のアナリティクスやAIのために提供することを目指してます。

今後も、世界中のパートナーとともに具体的な付加価値やユースケースを提供していきたいと考えています。

--将来に向けた中長期的な経営戦略について教えてください。

マクミラン:引き続き、プラットフォームに対するイノベーションやテクノロジーに投資を行います。これにより、お客さまがどこにデータあっても把握できるようにし、最先端の高度なサービスを活用して、データの課題に対処してもらいたいと考えています。

同時にコストパーマンスも得てもらい、大規模なデータの課題を解決するにはソフトウェアが重要です。単にコンピューティングのリソースを投入していけばいいというわけではなく、継続してマーケットプレイスにおいて、さまざまな業界における実際の課題・問題を解決していきます。