1996年の誕生以来、進化を続けているバンダイの携帯型育成玩具「たまごっち」シリーズ。今年7月には、シリーズ初のWi-Fi搭載機種「Tamagotchi Uni」が世界同時に発売された。同製品のインフラ基盤はAmazon Web Servicesのクラウドサービスによって支えられている。

「Tamagotchi Uni」はクラウドサービスにつながることで何ができるようになったのか、クラウドサービスを活用した開発においてどのような苦労があったのか――今回、「Tamagotchi Uni」の開発に携わったトイディビジョン グローバルトイ企画部 テクニカルデザインチーム 坂本大祐氏と企画1チーム 岡本有莉氏に話を聞いた。

  • 左から、バンダイ トイディビジョン グローバルトイ企画部 企画1チーム 岡本有莉氏、テクニカルデザインチーム 坂本大祐氏

Wi-Fiを介して世界中のたまごっちとイベント参加が可能に

まずは、「Tamagotchi Uni」について簡単に紹介しておきたい。「Tamagotchi Uni」は「たまごっち」をお世話しながら成長させていく玩具であり、お世話の仕方で「たまごっち」はさまざまなキャラクターに成長する。

「たまごっち」は生まれながらの性格を持っているが、世話をサボるとぐうたらになるとのこと。古いバージョンの「たまごっち」で、お世話ができずに死んでしまって、悲しい思いをしたことがある人もいるのではないだろうか。「Tamagotchi Uni」では、育てられない時はウォーキングをするなどして、命をつなぐことができる。

そして、最大の特徴は、Wi-Fi接続によって、世界中のたまごっちと筐体内で出会えることだ。Wi-Fiを介して、新しいイベントやアイテムの配信コンテンツをダウンロードが行えるほか、世界中のたまごっちと競うイベントに参加することもできる。

こうしたWi-Fiを介した新しい機能を実現しているインフラ基盤を支えているのが、Amazon Web Services(AWS)のクラウドサービスなのだ。

  • Wi-Fiを搭載している「Tamagotchi Uni」。世界中の「たまごっち」との出会いを実現している

クラウドだからファームウェアや最新機能の一斉配信を実現

今回、「Tamagotchi Uni」にWi-Fiを搭載した背景について、岡本氏は次のように語る。

「海外でもたまごっちは人気だったことから、世界展開を決めました。これまでのたまごっちは店頭などで追加のコンテンツを取得できたのですが、それを世界で同時に人気行うことは難しく、オンラインで配信するのがベストと考えました。また、世界で同時発売するにあたって、世界のユーザーが盛り上がれるようにしたいとも思いました」

世界中で発売するたまごっちにWi-Fiを搭載するとなると、必要となるのがその通信を支えるインフラ基盤だ。坂本氏は、技術的な観点から、Wi-Fi機能を支えるインフラ基盤について次のように説明した。

「世界中のたまごっちがインターネットにつながり、世界同時にコンテンツを配信するとなると、クラウドサービスが必須になります。また、たまごっちはお子さまが利用するので、セキュリティも重要です。認証や配信データを安全に管理する必要があり、自前でインフラ基盤を構築して運用するのは現実的ではないと考えました」

なお、ファームウェアや最新機能を一斉に配信できるため、すべてのユーザーが最新の状態で使うことができる点も「Tamagotchi Uni」の進化だ。これはクラウドサービスだから可能なことだろう。

こうして「Tamagotchi Uni」のインフラ基盤にはクラウドサービスが採用されることになったが、AWSを選択した理由はいくつかある。

まず、「Tamagotchi Uni」のOS「FreeRTOS」はAWSが提供しているものであり、機能面での親和性が高いことが大きかったという。加えて、サンプルやドキュメントも充実しており、プログラミングもAWSが最も抑えることができたそうだ。