ヤマハ発動機、名古屋大学(名大)、鹿児島県大島郡知名町、同・和泊町(いずれも沖永良部島)の4者は、沖永良部島をモデルとした脱炭素・持続可能なモビリティ社会の構築に向けた連携協定を8月10日に締結。それに伴い、8月29日には知名町にて締結式が行われた。
同協定では、モビリティの電動化課題の分析を進めてきたヤマハ発動機と、交通課題や施策効果の定量的把握に関して実績を持つ名大が、それぞれの知見を共有。モデルとなる知名町・和泊町からは、地域課題やその背景についての情報提供を受けるなど、相互の資源を有効活用しながら、環境や地域の課題解決に向けた産官学連携を推進するとしている。
ヤマハ発動機によると、今回の協定に基づく共同研究では、以下の3段階における実証的取り組みを想定しているという。
- 電動車両の航続距離や充電時間などの性能、充電の場所やタイミングなど、島内モビリティの電動化に向けた課題把握
- 島民の日常生活や物流といった移動目的別、あるいは自家用車や公共交通機関などの車種別に整理した課題を分析し、電動化の優先順位を明確化
- 蒸気を踏まえた、島内の諸課題に対する相乗効果の高い解決策の創出
共同研究の一環として、はヤマハ発動機が電動モビリティを貸し出し、島内の通勤や日常生活でのCO2削減効果の測定、および電動車両普及の課題抽出を行うとのこと。まずは知名町役場にEVバイク「E01」3台を8月9日から1年間貸与し、町職員の通勤時や日常における使用を通じて、EVバイクの利用可能性などについて探索していくとする。
また、同社の関連車両として「グリーンスローモビリティ」の貸与も行われるといい、今後同車両の実証走行も行っていく予定だとしている。
なお、今回の電動モビリティ社会構築に向けた実証実験の場として沖永良部島を選んだ理由として、ヤマハ発動機は、知名町と和泊町においてモビリティやエネルギー面などのカーボンニュートラル課題がある一方で、環境省からは「脱炭素先行地域」の選定を受け、先行的なカーボンニュートラルの取り組みを続けている点を挙げる。
また同社担当者は加えて“離島”であることのメリットを示し、「人口がおよそ1万人と、日本全国の1万分の1程度という実証に適した規模である上、島という閉鎖的な地理条件によって、地域住民の移動課題などをより正確に把握できる」という点を挙げた。
そして今後は「沖永良部島の交通やエネルギーにおける課題を把握することで、今後の大規模でのカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みの方向性を見定めていきたい」としている。