三菱重工業(MHI)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は8月28日、X線分光撮像衛星「XRISM」と小型月着陸実証機「SLIM」を搭載するH-IIAロケット47号機を打ち上げる予定だったが、高層風が制約条件を満たさなかったため、打ち上げの約30分前に中止を決めた。種子島はしばらく天候が悪い予報で、新たな打ち上げ日は未定。
晴れても延期する理由
ロケットを打ち上げるためには、様々な制約条件を全て満たす必要があるが、今回、問題となったのは、飛行安全系・射場系における高層風の条件「射点近傍で破壊した場合に、落下破片等による警戒区域外への影響がないこと」だ。MHIによれば、高度5~15kmに最大30m/s弱の強風が吹いていたという。
1つ補足しておきたいが、この風速でも、ロケットの飛行自体には問題無かったという。問題だったのは風向き。東から北東の風だったとのことで、万が一、指令破壊などで機体がバラバラになった場合、風によって破片が陸側に流され、射点から半径3kmの立ち入り規制エリアの外側に落下する恐れがあった。
気になるのは新たな打ち上げ日であるが、予測は難しい。当日の延期だったため、通常であれば次は最短でも3日後ということになるのだが、接近中の台風の影響などもあり、しばらくは打ち上げに適さない天候が続く見通し。今日、新たな打ち上げ日が発表できなかったのは、そういう事情がある。
機体は同日18時よりVAB(大型ロケット組立棟)に戻され、点検や整備が行われる予定。新たな打ち上げ日が決まり次第、それに向けた準備が再び行われることになる。
やや気がかりなのは、今回の予備期間が9月15日までであること。まだ2週間以上の余裕があるとはいえ、台風の影響が長期化すれば、厳しくなってくる恐れがある。もし今回のウィンドウを逃すと、打ち上げがさらに大幅に遅れてしまうので、なるべく今回のウィンドウで打ち上げておきたいところだ。
前日の機体移動の様子
前日の27日には、機体移動が行われたので、そのときの取材画像をここで紹介しよう。VAB(大型ロケット組立棟)に格納されていたロケットは、18:30より移動を開始。30分かけて第1射点へ運ばれ、19:00に到着した。
SORA-Q in 種子島宇宙センター
最後は、前回の記事に続き、SORA-Qの写真を添付したい。本当はSORA-Qと一緒に打ち上げを見届けたかったのだが、しばらく天候が悪そうなため、筆者はひとまずこれにて種子島から撤退する。次回どうするかは未定だ……。