NTTデータグループは8月8日、2024年3月期(2023年度、2023年4月1日~2024年3月31日)第1四半期の決算説明会をハイブリッド形式で開催した。

同期決算の売上高は1兆150億円(前期比49.8%増)、営業利益は583億円(同1.4%増)、四半期利益(当期利益)は277億円(同30.4%減)となった。

  • 2023年3月期 第1四半期決算の概要

    2024年3月期(2023年度) 第1四半期決算の概要

同社は2023年7月から、「NTTデータグループ」を持株会社として、NTTデータが国内事業を担い、NTT DATA, Inc.(エヌティティデータインク)が海外事業を担当する3社体制に移行した。今回は同体制に移行後、初の決算説明会となる。

コンサルとソリューションを繋げる案件で収益増を狙う

第1四半期は、NTTグループのグローバル通信事業を担っていたNTT Ltd.(エヌティティリミテッド)の連結による影響に加え、国内・欧州における規模拡大及び為替影響などにより売上高が増収となった。受注高も、NTT Ltd.連結拡大影響や国内における大型案件の獲得などにより増加した。

営業利益は、NTT Ltd.連結の拡大影響や増収などに伴う増益はあるものの、海外における統合費用・構造改革費用の増加及び全社戦略投資の増加などにより前年並みの水準にとどまった。当期利益は、NTT Ltd.連結拡大影響に伴う金融費用等の増加により減益となった。

NTTデータグループ 取締役副社長執行役員の中山和彦氏は、「営業利益は想定している範囲から外れていないため、5月に発表した業績予想から変更はない。当期利益は前期比で見ると下がっているが、年間想定の4分の1程度は取れている。中長期的な成長に向けて、引き続き、積極的な投資と事業構造改革などを進めていく」と今後の経営方針を説明した。

  • NTTデータグループ 取締役副社長執行役員 中山和彦氏

    NTTデータグループ 取締役副社長執行役員 中山和彦氏

決算説明会では、為替や金利の動向にも話題が及んだ。中山氏によれば、金利の動向と投資の進め方によっては、借入金などの金融費用が若干拡大する可能性があるという。その場合、金利上昇によって全般的にコストアップしている中で、一部のコストを顧客対応にて調整するほか、業務効率化や営業利益の向上でボトムラインの達成を目指すという。

「国内の堅調なDX(デジタルトランスフォーメーション)ニーズを背景に、IT投資は拡大傾向にあり、そこに注力することで利益を押し上げられると考える」(中山氏)

また、収益力向上については、中期経営計画で掲げているコンサルティングと技術力を強化し自社のアセットに繋げていく戦略が肝になるという。

同社では最近、サステナビリティ経営に関連した相談が増えてきているそうだ。その中には、2023年7月に発表された、JR西日本における温室効果ガス(GHG)可視化システム「C-Turtle」導入のように案件として成立したものもあるという。今後もサステナビリティ課題にコンサルティングから関わり、自社ソリューションの実装まで繋げる事例を増やしていく方針だ。

企業や業界に特化した生成AIのニーズに応える

決算説明会では、3社体制への移行に伴って統合した海外事業の状況も紹介された。NTTデータの海外事業のグループ会社とNTT Ltd.を統合したことで、システムインテグレーションからサービスオペレーションまで、フルスタックなソリューション提供を実現できるようになった。これにより、親会社からのスピンアウトに伴うIT環境構築案件を大手多国籍企業より受注したことが明かされた。

また、前回の期末決算説明会で、今期中にデータセンター事業で約3500億円の投資をする計画が発表された。第1四半期には、インドのムンバイで4つのデータセンターを竣工しており、今期中には合計で10のデータセンターを竣工する予定だ。

  • NTTデータグループ データセンター事業の成長戦略

    NTTデータグループ データセンター事業の成長戦略

NTTデータは6月29日、生成AI(ジェネレーティブAI)の活用をグローバルで推進する「Global Generative AI LAB」を設立したことを発表した。

同取り組みでは、生成AI関連ソリューションのグローバル展開や新サービスの提供を計画しているが、グループの一部で活用事例が出てきており、今年度中にも複数のプロジェクトでの試行適用が計画されているという。

NTTデータグループとしては、今後は複数のLLMを組み合わせて利用するほか、企業や業界に特価した小規模でセキュリティ水準の高いLLMのニーズが出てくると想定している。

中山氏は、「生成AIは事業にとって相応のインパクトをもたらすと考える。ソフトウェア開発におけるコーディング効率化のほか、顧客に提供するサービスに組み込むことでサービスの付加価値を高められるだろう。NTTの研究成果を活用できる機会でもあり、国内でデータを扱いたいというニーズが出る中では、当社のデータセンターも価値を提供できることだろう」と述べた。