NTTデータは5月11日、2023年3月期(2022年度、2022年4月1日~2023年3月31日)の決算説明会をオンラインで開催した。

同期末決算の売上高は3兆4902億円(前期比36.8%増)、営業利益は2591億円(同21.9%増)、当期利益は1500億円(同4.9%増)となった。

  • 2023年3月期 期末決算の概要

    2023年3月期 期末決算の概要

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2024年3月期は売上高4兆1000億円を予想

NTTデータ 代表取締役社長の本間洋氏は「NTTグループのグローバル通信事業を担っていたNTT Ltd.(エヌティティリミテッド)の連結影響や、円安が進行した為替の影響によりすべてのセグメントで増収増益となった」と説明した。

  • NTTデータ 代表取締役社長 本間洋氏

    NTTデータ 代表取締役社長 本間洋氏

受注高は、公共・社会基盤分野において前期に獲得した大型案件の反動減はあったものの、国内外での案件獲得および為替影響によって3248億円の増加となった(受注算定方法が異なることからNTT Ltd.の連結影響は含まれない)。

売上高は全セグメントで拡大した。NTT Ltd.の連結により約5800億円、為替の影響により約1600億円の増収となり、それらの影響を除くと約2000億円の増収となった。

営業利益は増収に伴って増益となったが、公共・社会基盤分野については不採算案件があり、前年並みの利益水準となる681億円にとどまった(前年度は686億円)。

2024年3月期(2023年度、2023年4月1日~2024年3月31日)の業績予想については、NTT Ltd.の連結影響が通期にわたって及ぶことに加えて、国内事業の規模拡大や事業成長などを背景に増収増益を見込む。売上高は4兆1000億円、営業利益は2920億円の予想だ。一方、当期利益については、海外低採算事業撤退に伴う費用増や、設備投資の増加に伴う金融費用増などにより減益を見込んでいる。

  • 2024年3月期の業績予想

    2024年3月期の業績予想

EMEAL、APAC、北米で地域に即したオファリング体制を構築

NTTデータは2022年10月にNTT Ltd.を統合し、海外事業会社として「NTT DATA, Inc.(エヌティティデータインク)」を設立した。2023年7月からは「NTTデータグループ」を持株会社とする3社体制に移行し、国内事業はNTTデータが担当する。

海外事業統合後はNTT DATA, Inc.とNTT Ltd.の顧客基盤を活用したクロスセルの推進や、ITとコネクティビティを融合したソリューションの展開など、新たな事業機会の創出と収益性の向上に取り組んできたという。

海外事業におけるシナジー創出を加速すべく、NTTデータは2024年度から新たなオペレーティングモデルの下で事業を展開する。

  • 海外事業におけるシナジー創出に向けた取り組み

    海外事業におけるシナジー創出に向けた取り組み

2024年度以降はEMEAL(欧州・中東・アフリカ・中南米)、APAC(アジア太平洋)、北米の3地域にリージョンユニットを設立。地域ごとに一元的にオファリング提供を行える体制を整備することで、顧客エンゲージメントを強化するという。

データセンターやネットワークといった既存の共通サービスをグローバルに提供するGlobal Technology Servicesや従来からSAPを提供してきたNTT DATA Solutionsを通じて、グローバルで共通サービスの提供能力を強化する方針だ。また、コーポレート機能の全体最適化も図る。

「今後、海外事業再編を本格化的に推進し、中期経営計画の目標であるEBITA(Earnings before Interest, Taxes and Amortization)率の10%達成を目指す」と本間氏は意気込んだ。

データセンター事業で約3500億円の投資計画

説明会では、2022年~2025年を計画年度とする中期経営計画の達成、および2026年度以降の中長期的な成長に向けた投資戦略も明かされた。

NTTデータは今後、「Strategic Investments」「M&A」「データセンター」の3領域での投資を強化する方針だ。

  • 中長期的な成長に向けて3領域で投資

    中長期的な成長に向けて3領域で投資

Strategic Investmentsについて、2023年度は320億円規模の投資を予定している。具体的にはデジタルデリバリやインダストリー別のデジタルオファリング強化、先進技術の活用、業務提携やサステナビリティビジネス推進に投資するという。

M&Aについては、北米など主要マーケットにおけるシェア拡大と、商材・ノウハウ・人材獲得、コンサルティング強化などを目的に2023年度以降も800億規模の投資を実施する予定だ。

データセンター事業への投資については、2023年度に約3500億円の投資を計画している。データセンターは投資回収までに期間を要するため、一時的に収益性や財務健全性が悪化することが予想される。そのため、NTTデータでは国内金融機関での借り入れなどの第3者資本を活用することで、投資回収期間の短縮を図るという。

本間氏は、「データセンターは中長期的な事業基盤の柱と位置づけている。ハイパースケーラーの旺盛な需要を追い風にプレゼンスを強化すべく積極的な先行投資を実施していく。事業基盤の拡大とハイパースケーラーとの関係強化を進め、エンタープライズ向けサービスも強化する」と語った。