今回の電波ジェットと水メーザーの観測を受け、過去の電離ガス、中性水素ガス、分子ガスの観測結果も含めて、NGC4261の中心部の構造が以下のように提案された。

  • NGC4261の中心部のガスの分布の想像図。

    NGC4261の中心部のガスの分布の想像図。(c)2023- Sawada-Satoh et al. (2023) PASJ, Vol.75, Issue 4, p.722(出所:VERA Webサイト)

ガス円盤が中心の大質量ブラックホールを取り巻き、電波ジェット方向に垂直の向きに広がっている。これは、ジェットが大質量ブラックホールの南北の双極方向に噴き出すもので、赤道に円盤があることを意味する。そして水分子ガスは円盤の半径1光年より内側に分布し、円盤の中で乱流を起こしながら中心のブラックホールへ落下していると予想される。

今回の観測では、電波銀河の大質量ブラックホールを取り巻くガス円盤の手前側における水メーザーが検出された。電波望遠鏡から見て水分子ガスの背景にジェットが存在する時、水分子からのメーザー放射が明るく観測されるとする。

なお、今回の8局の電波望遠鏡によるLBIネットワークの安定した性能と高角分解能が、NGC4261の大質量ブラックホール最近傍のガスの構造と運動の検出を可能にしたという。

またVERAは現在、新しい高感度受信機の開発を進めており、その新型受信機を用いると観測の感度が向上するとのこと。加えてKVNは2023年現在4局目のアンテナを平昌に建設中で、観測の感度と撮像性能の高い観測が期待できるといい、今後のアップデートされた東アジアVLBI観測が、NGC4261のブラックホールへのガス降着機構をさらに解明していくとしている。