米国半導体工業会(SIA)は、米国半導体業界の現状分析レポートの最新版「STATE OF THE U.S.SEMICONDUCTOR INDUSTRY 2023」を公表し、米国の半導体産業が直面する課題と機会を浮き彫りにした。

CHIPS法による補助金を呼び水に2000億ドル超える官民投資に期待

2022年8月に成立したCHIPS & Science Act of 2022(CHIPS法)が呼び水となり、すでに総計2000億ドルを超える米国への民間投資計画が発表されていることをレポートでは強調している。

半導体の需要が高まる中、世界中の国々が半導体生産とイノベーションを自国に呼び込むために政府投資を強化している。米国政府も2022年にCHIPS法を制定し、米国の経済、国家安全保障、サプライチェーンの強化などを掲げている。

CHIPS法が発表されて以来、世界中の企業が呼応し、米国における総額2000億ドルを超す民間投資ベースによる数十の新規半導体エコシステムプロジェクトを発表している。これらのプロジェクトは、半導体エコシステムに数万の直接雇用を創出し、米国経済全体でさらに数十万の雇用を支援することにつながることが期待されている。CHIPS法の施行は2023年より本格的に開始され、SIAもこの動きを受け、米国の経済、国家安全保障、サプライチェーンの回復力に最大限の利益をもたらすよう建設的な役割を果たすことを目指すとしている。

CHIP法では、米国に投資する半導体および関連メーカーを支援するため、390億ドルの予算が用意されている。商務省は現在、資金援助を希望する企業の申請を募集しており、すでに400を超える申請が寄せられているという。

同レポートでは、米国外における同様の支援策の紹介もされており、そうした政策によって健全な競争が生まれれば、技術革新とサプライチェーンの多様化につながると評価する一方、非効率な事態が生じないよう国家間の調整が必要とも主張している。国外との連携の一例として、米国、カナダ、メキシコの北米3カ国の産学官による「北米半導体会議(NASC)」が紹介されている。

最大の課題は米中の対立

半導体産業の将来には大きな期待が寄せられている一方、さまざまな課題も生じていることを同レポートは指摘している。特に米中の緊張は、半導体の最大市場である中国への半導体販売に対する規制強化に拍車をかけるなど、世界のサプライチェーンに影響を与え続けている。また、半導体設計における米国のリーダーシップを強化する政策の制定、米国の高技能移民とSTEM教育制度の改革による半導体労働力の強化、自由貿易と世界市場へのアクセスの促進などといった政策課題も掲げられているほか、世界的な半導体不足は緩和しているものの、マクロ経済の逆風と市場サイクルにより、短期的な市場低迷が生じており、この影響は年間を通じて長引くと予想している。

長期的にみた半導体産業の見通しは明るい

なお、同レポートでは、こうした課題にも関わらず半導体産業の長期的な見通しは明るいと結論付けている。今後、世界は家庭でも工場でも公共の場でも、あらゆるものが半導体を必要とし、社会が進歩していくためには、半導体の進化が必要となるためで、2023年は年間を通して市場が低迷するものの、政府の効果的な政策と業界の継続的な努力と創意工夫により、半導体産業は今後も継続して成長が続き、革新を生み出し明るい未来を築いていくとSIAは楽観視している。