東北大学は7月28日、活性と耐久性を両立する物質として、クロム(Cr)・マンガン(Mn)・鉄(Fe)・コバルト(Co)・ニッケル(Ni)の5元素種が混合したハイエントロピー合金(HEA)を白金(Pt)と合金化させた「Pt-ハイエントロピー合金」(Pt-HEA)に注目し、電極の触媒反応が進行する合金最表面構造と構成元素種の分布を制御したモデル触媒を作製して、Pt-HEA表面が高い活性と耐久性を両立することを明らかにしたと発表した。

同成果は、東北大大学院 環境科学研究科 環境材料表面科学分野の和田山智正教授、同・千田祥大大学院生らの研究チームによるもの。詳細は、英オンライン科学誌「Nature Communications」に掲載された。

燃料電池自動車(FCV)の動力源や定置用電源など中核を成す固体高分子形燃料電池(PEFC)では、正極で酸素還元反応(ORR)が進行するが、その反応速度は極めて遅く、触媒として希少かつ高価なPtを多量に必要とすることが課題となっている。現在、Pt使用量削減へ向け、PtとCoなどの遷移金属合金ナノ粒子が実用化されている。このPt-Co合金触媒は、Ptの使用量を削減すると同時に、Ptよりも高い触媒活性を示すことを特徴とするが、まだ改良すべき点もあり、燃料電池発電時の強酸性で電位変動が激しい環境では、Coが酸化溶出して失活してしまうため、その耐久性を向上させた新たなPEFC用ORR触媒材料が求められていた。

研究チームはそのような背景の下、超高真空(10-8Pa以下)の極めて清浄な環境下で表面構造が原子レベルで制御されたモデル触媒を作製し、その燃料電池触媒特性を評価する実験手法を独自開発することで、触媒表面の原子構造が特性に及ぼす影響を解明してきた。

HEAは高温機械特性や化学的安定性に優れることを特徴としており、Ptと合金化したPt-HEAは触媒の高耐久化が期待できるという。Pt-HEAをPEFC用ORR触媒として実用化するためには、合金表面の原子構造や多数の構成元素の分布を最適化することが必要だとする。

そこで研究チームは今回、真空蒸着法の一種である「アークプラズマ蒸着法」を用いて、Pt-HEAの表面近傍の構成元素分布や最表面原子構造を原子レベルで制御したモデル触媒表面を作製し、表面ミクロ構造がORR特性(活性・耐久性)に及ぼす影響を調査。ORR特性向上メカニズムを解明するHEA電極触媒の実験研究プラットフォームを構築することに成功したという。