Salesforceは7月20日と21日の2日間、年次イベント「Salesforce World Tour Tokyo 2023」を東京港区のホテルで開催した。同イベントのテーマは「AI、データとCRMがビジネスの未来を創る」で、数多くの事例が紹介された。

本稿では、資生堂ジャパンとアクセンチュアによる「テクノロジーで進化する顧客体験? 資生堂が提供する顧客体験の進化と変わらない本質?」と題する講演から、資生堂の事例を紹介する。

アクセンチュアと資生堂は2021年7月、合弁会社「資生堂インタラクティブビューティー」を設立。同社は、資生堂が掲げる中期経営戦略に基づき、ビューティー領域に特化したデジタル・ITの専門家集団として、資生堂だけでは成し得ないスピードとイノベーションで、新しいビューティー体験を実現しようとしている。

アクセンチュアは資生堂に対して、ITやデジタル領域、コマース、マーケティングの部分を支援している。

顧客一人一人の嗜好に合わせたビューティー体験を提供

資生堂ジャパン EC事業部ダイレクトコマース部 オウンドECグループ グループマネージャー 松山美紀氏

資生堂ジャパン EC事業部ダイレクトコマース部 オウンドECグループ グループマネージャー 松山美紀氏

資生堂は、2012年に総合美容プラットフォームとして「ワタシプラス」というオンラインショップを開始し、昨年10周年を迎えた。「ワタシプラス」の運営管理を行う資生堂ジャパン EC事業部ダイレクトコマース部 オウンドECグループ グループマネージャー 松山美紀氏によれば、同社は生活者の価値観が多様化する中、サイエンスに裏付けられたスキンケア、メイクアップ、フレグランス、インナービューティ、さらにはウェルネスといった領域も開拓して、顧客一人一人の嗜好に合わせたビューティー体験を、デジタルを通じて提供していくことを行っているという。

そのために同社は、パーソナライゼーションや双方向性をテーマにDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めている。例えば、日本初の3D肌診断と美容機器を用いたパーソナライゼーションの実現のため、エフェクティムというブランドを発売したほか、DNA分析(Beauty DNA Program)をもとにしたカウンセリングやクラウド対応した肌分析やシミュレーター(メイクアップシミュレータ)の導入、バーチャルで高度な肌測定を用いた新しいパーソナルカウンセリング体験を実現する「スマートラディアンスミラー」の提供を行っている。

  • 資生堂のDXの取り組み

    資生堂のDXの取り組み 出典:資生堂ジャパン

また、顧客との架け橋の役割を担うパーソナルビューティーパートナー(PBP)の役割も近年は変わってきており、店頭で顧客を待っているスタイルから迎えにいくスタイルに変化。One to OneやOne to Manyのカウンセリングを通じて、ユーザーにデジタルを通じて美を提供する活動に進化してきているという。

  • パーソナルビューティーパートナー(PBP)の役割の変化

    パーソナルビューティーパートナー(PBP)の役割の変化(出典:資生堂ジャパン)

「私たちが大事にしているのは、買う前、そして買った後も、いかにお客様との関係性を続けられるかです。購入前後の体験を強化することが非常に重要だと考えています」と松山氏は語った。

購入前後の体験強化に向けて、同社は、オンラインショップである「ワタシプラス」も進化させている。顧客がどういったフローで、どんなものを購入したのかといったデータから顧客の顔をイメージし、いくつかのユーザーモデルを見える化、それをベースに体験設計を行っている。

  • オンラインショップ「ワタシプラス」

    オンラインショップ「ワタシプラス」(出典:資生堂ジャパン)

  • 購入前後の体験強化

    購入前後の体験強化(出典:資生堂ジャパン)

この体験設計をもとに生まれたコンテンツとしては、簡単な問診に答えるだけでおすすめのメイクを紹介する「ワタシメイク分析」や、肌タイプ、肌悩みからレビューを検索し、自分と同じ悩みの人はどういうものを買っているのかを知ることができるコンテンツがあり、長く使える点を重視してコンテンツ作成を行っているという。

  • 体験強化へのアプローチ

    体験強化へのアプローチ 出典:資生堂ジャパン