セールスフォース・ジャパンは7月20日・21日の2日間にわたり、年次イベント「Salesforce World Tour Tokyo/AI、データとCRMがビジネスの未来を創る」を開催している。
リアルタイム技術と生成AIの台頭により、世界全体、そしてビジネスのあり方も大きく変わろうとしており、すべての企業は、今まで以上にパーソナライズされた顧客体験をリアルタイムで提供することが求められている。
そのような背景を受けて開催されたSalesforce World Tour Tokyoでは、顧客・従業員・パートナーとより深くつながるための、ビジネスにおけるAIやデータの活用方法など、最新のテクノロジーや顧客事例が紹介されている。
本稿では、20日に行われた基調講演「Calling all TrAIlblazers ~ AI、データとCRMがビジネスの未来を創る。」の一部始終をお届けする。
生成AIの最大の特徴は普及の「速度」
基調講演「Calling all TrAIlblazers ~ AI、データとCRMがビジネスの未来を創る。」において、セールスフォース・ジャパン 代表取締役会長 兼 社長の小出伸一氏は以下のように開始の挨拶を述べた。
「今回のイベントは会場とオンラインの参加で、事前の申し込みだけで2万5000名もの方に申し込みをいただいています。このような大きなイベントとして開催できることを大変嬉しく思います。全てのお客さま、パートナー、MVP、NPOの皆さまは、道なき道を切り開いてきたトレイルブレイザーです。そして、社会をより良い方向へ導こうとされている方々です。今日はこの場を借りて、皆さまの日々のアクティビティに感謝御礼を申し上げます」(小出氏)
このような言葉で始まった基調講演だが、続いて小出氏は「生成AIの取り組みとテクノロジー」について説明した。
「生成AIはビジネスを大きく変えていくと、全ての方が考えているでしょう。確かに過去を振り返ってみても、ビジネスに大きなイノベーションを起こしたテクノロジーはいくつかあります」(小出氏)
小出氏は、「ビジネスを大きく変えたイノベーション」として、「モバイル(携帯電話)」と「ソーシャルメディア(SNS)」を挙げた。
どちらも大きな革新をもたらしたテクノロジーだが、「生成AI」はこの2つとは大きく異なる点があるという。それは、「普及の速度」だ。
モバイルに関して言えば、利用者が1億人を超えるまでにかかった時間は16年と非常に長い時間だった。また、ソーシャルメディアの代表格とも言えるInstagramも利用者が1億人を突破するのには2.5年という年月が必要だった。
一方で、生成AIの代表格とも言えるChatGPTの利用者が1億人を超えるのに要した時間は、ほんの2カ月だったという。
「したがって経営者の皆さんは、今までにない新しいイノベーションの潮流をいち早く捉えて、AI戦略を打ち出し、それを企業戦略の柱にする必要が出てきたということになります。つまり、あらゆるビジネスの戦略にAIが必要なのです。今までは『クラウドファースト』『モバイルファースト』と言われてきましたが、これからは『AIファースト』という考え方に大きく舵を取っていく必要があるでしょう」(小出氏)
とりわけ、生成AIはビジネスにおいて新しいイノベーションのサイクルを生み出すことが期待されているという。特に期待が寄せられているのは、以下の5つの分野でのイノベーションだ。
・新たなレベルの生産性
・新たなビジネスモデル
・新たな顧客体験
・新たなツールとスキル
・新たな製品戦略
AI活用のキーワードは「信頼」
しかし、企業がAIをイノベーションに積極的に活用していくには「信頼」というキーワードを忘れてはいけないという。
そしてこの「信頼」という課題を解決するために、セールスフォースが提供するのが、2023年6月に発表した「AI Cloud」だ。
AI Cloudは、企業が利用する安全性を組み込んだEinstein GPT Trust Layerと顧客データを集約するデータクラウド、そしてAIを搭載したCRMを統合した機能群となっている。
「特にEinstein GPT Trust Layerは、企業データ・顧客データのプライバシーやセキュリティを確保しながら生成AIの素晴らしいメリットを享受することを支援する機能を持ったプロダクトです」(小出氏)
この信頼性に関しては、セールスフォース内で全世界の生成AIに関するプロダクトに関わっているマーク・マシュー氏もその重要性を力説した。
「小出氏の話にもあったように『信頼』というものはとても重要です。全く新しいテクノロジーへの移行が起きる際には必ず不可欠なものなのです」(マシュー氏)