新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、産業技術総合研究所(産総研)の人工知能研究センターが開発した、写真などの実画像を用いずに数式やアルゴリズムなどをもとにAIの画像認識モデル(学習済みモデル)を機械的に生成する画像AI向けモジュール開発コンテストを開催することを発表した。

同コンテストで競われる生成モジュールの基本的な考え方は2022年に産総研が成果発表したもので、学習済みモデルで、画像認識性能のベンチマークに活用されるImageNetの画像データセットを認識させたところ、実画像や人の判断を経た教師ラベルを用いる従来手法と比べ高い精度を実現していることが確認されている。

  • 画像理解AIの概念図

    実画像や人の判断による教師ラベルを必要とせず、数式から生成した教師ラベルで学習された画像理解AIの概念図 (出所:産総研Webサイト)

今回のコンテストは、この研究開発成果を基に、新たな数式によるもの、複数の数式を組み合わせたもの、アルゴリズム的に生成するもの、これらを組み合わせたものなどを新たな発想で開発したモジュールを競うものだとNEDOでは説明しているほか、生成する画像を増やした時に、認識性能が向上する(特徴量空間の網羅性が向上する)仕組みを含んだ画像生成手法とすることが求められるともしている。

開発されたモジュールはHPO(Hyperparameter Optimization)ライブラリ「aiaccel」で動作するように開発することが求められ、その評価は産総研のスーパーコンピュータ(スパコン)「ABCI(AI Bridging Cloud Infrastructure)」を用いて行われる予定となっている。また、評価自体は、提出されたモジュールで作成した事前学習モデルを他のデータセットに適用した場合でも、高い識別率を実現するかどうかが基準になるとしている。

今回のコンテストの運営はNEDOからの委託によりSIGNATEが担当。7月18日時点ではNEDOならびにSIGNATEのWebサイト上に詳細なスケジュールを公開する予定としており、参加申し込み方法についてはSIGNATEのWebサイト上に公開予定としている。

コンテストは予選と本戦の2段階で行われ、それぞれ2.5カ月を予定。予選では、100クラス程度で評価し、上位10チーム程度が本戦への参加資格を獲得。本選では、1000クラス程度で評価が行われ、定量評価と定性評価それぞれで上位チームに賞金が与えられる。定量評価は精度をプログラムで評価し、上位3チームに120万円、100万円、80万円が授与される。一方の定性評価は、アルゴリズムの斬新さなどを、説明資料に基づき評価、上位2チームにそれぞれ50万円が授与される予定となっている。 なお、開発されたモジュールは原則としてソースコードを公開することが求められるとしている。また、経済産業省(経産省)、NEDO、産総研の3者は、こうしたコンテストの実施を通じて、産総研開発の独自画像AIソフトの発展と普及を支援する環境づくりを進めていく模様である。