仏Yole GroupのYole Intelligenceによると、近年のNAND市場は新型コロナの問題、ロシアのウクライナ侵攻、米中貿易摩擦、世界的なインフレなどの課題から、激動を迎えており、不確実性だけが確かに存在する状況となっているという。

そのため、NANDサプライヤ各社の合計売上高も、需要の低迷とサプライヤならびにOEMの在庫増加に伴うビット出荷数量の減少と平均販売価格の低下により2022年第3四半期から2023年第1四半期まで3四半期連続でマイナス成長となっており、第3四半期も大きな期待ができない状況となっている。そのため、市場の回復は第4四半期以降となることが予想されるという。

  • NAND業界の総売上高およびメーカーごとの売上高(2021年~2024年)の推移

    NAND業界の総売上高およびメーカーごとの売上高(2021年~2024年)の推移 (出所:Yole Intelligence)

ただし、市場の不確実性によって長期的な見通しを立てることは難しく、各種アプリケーションのデータ生成ニーズと、それに伴うストレージ容量の増加はあるものの、NANDサプライヤ各社は設備投資額の増加や価格の下落などに伴う低利益率に悩まされる状況となっている。

ただし、従来のエンタープライズSSDやPC、ゲーム機などでのSSD需要、スマートフォン(スマホ)を中心とするモバイル機器でのストレージ容量の増加トレンドに加え、AIやVR/AR関連機器市場の成長、自動運転、IoTなどの新興トレンドが今後の市場成長に貢献することが期待されるともしている。

  • スマホに搭載されるNAND容量の変化予測

    スマホに搭載されるNAND容量の変化予測 (出所:Yole Intelligence)

一方のDRAM市場も2022年第3四半期以降、3四半期連続でのマイナス成長となり、特に2023年第1四半期の利益率は前四半期の9%から、マイナス16%まで低下している。また、同四半期までの1年の間に、出荷数量が予想と比べ13%下回る事態となり、在庫の積み増しが進み、現在までに13週分以上の在庫を抱えているという。

こうした状況から、2023年第1四半期をDRAMの低迷サイクルの底と呼ぶにはまだ時期尚早とYoleでは指摘しているが、その一方ですでに市場が改善に向かう兆しも出ているという。

なお、現在、中国はほかの半導体分野同様、DRAMも国内での自給自足を目指している。しかし、米国の対中輸出規制の強化、特にウェハ製造装置(WFE)の出荷に対する制限の強化により、中国がこの目標を実現するのは難しくなりつつある。そのため中国がこうした課題を克服し、DRAM市場で成功できるかどうかは未知数であるとYoleではコメントしている。

  • 四半期ごとのDRAM市場の総売上高および企業別売上高の推移

    四半期ごとのDRAM市場の総売上高および企業別売上高の推移 (出所:Yole Intelligence)