NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)、竹中工務店、清水建設の3社は7月11日、建築現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)に向けて、特に施工管理業務のデジタル化を目指す協業を開始したことを発表し、記者会見を開いた。

3社は、日々の建築現場において実施される工程管理やリソース手配、作業指示などに必要な施工管理情報を、工程表の計画から作業日報に至るまでデジタル化することで、各工程と作業をつなぐ施工管理業務全体の生産性向上を図る。

これまで、竹中工務店と清水建設がそれぞれNTT Comと個別に建築現場のDXに向けたソリューションの検討を進めていたが、さらなる開発を促進するために3社での協業に至ったとしている。工程表はアナログで管理される場合も多く、これをデジタル化することのメリットは大きいそうだ。

  • 記者会見の様子

    記者会見の様子

36協定の法制化によって、2024年から建設業でも時間外労働の上限規制が適用される予定だ。7月11日時点で、上限規制の適用まで残り265日であり、対応が急がれるのが現状である。労働時間適正化の目標を達成するために、行動計画の策定と遂行が求められているそうだ。また、建設業界は就労人口の減少も著しく、ピーク時と比較すると現在は約28%が減少したという。

その一方で建設への投資額は増えており、2020年と比べても約2.3%の増加だ。少ない時間と人員でこれまで以上の仕事量をこなす必要があり、建設現場ではDXによる新しい働き方への変換が迫られる。

これまでにも現場を支えるITソリューションの利用は試みられてきたが、各ソリューションは業務に特化したものが多く、各工程を横断した実用的なデータ連携が課題であった。また、工程表と作業日報で扱う情報も、手書きの資料に起因して粒度の差異が生まれるためにデータ化が困難だったようだ。

こうした課題に対して3社は、工程情報に着目した施工管理業務のデジタル化を促す。まずは3社でワーキンググループを組み、工程管理のデジタル化に向けた検討を進める予定だ。清水建設においては、日建連(日本建設業連合会)が提供する「適正工機算定プログラム」との連携に関する検討にも取り組む。

  • 協業における3社の役割

    協業における3社の役割

具体的には、デジタル化した工程情報と作業調整・手配、および作業日報をアプリケーション化して、情報の粒度の差異を調整しながら実用的にデータを連携させて施工管理業務を支援する。将来的には、施工管理業務全体の約3割の削減を目指す。

施工管理業務のデジタル化によって現場データの連携を促すことで、重複入力や手配ミスの削減が見込める。また、実績データを活用して工程計画の精度向上も狙えるほか、多くのデータが蓄積すれば作業手配や指示の半自動化にもつながるという。

蓄積されたデータを活用して、労務、材料、施工スペース、建機などリソースに関する生産性指標を具体的に数値化して、効率性を可視化できる。将来的には、建設ロボットの連携など先端技術を実務で展開するための基盤へと昇華させる。

  • 3社による協業の展望

    3社による協業の展望

NTT Comの常務執行役員である小島克重氏は「当社はさまざまな社会課題に対し、モバイルやITなどのデジタルテクノロジーを活用したソリューションを提案している。清水建設および竹中工務店という建設の専門家の方々と一緒に取り組むことで、業界のDXに貢献したい。ひいては日本の経済全体の発展にも貢献したい」と語り、意気込みを見せた。

  • NTT Com 常務執行役員 小島克重氏

    NTT Com 常務執行役員 小島克重氏

説明会に同席した竹中工務店の専務執行役員の丁野成人氏は「近年の建設現場は高齢化や就労人口の減少によって、現場管理者の慢性的な長時間労働が課題となっていた。労働時間の上限規制の適用が迫る中で、建築現場全体の生産性向上が急務となっている。今回は大手ゼネコンの2社が協業に携わることで、オープンかつスタンダードな成果の創出を目指したい」とコメントした。

  • 竹中工務店 専務執行役員 丁野成人氏

    竹中工務店 専務執行役員 丁野成人氏

同じく、清水建設の専務執行役員を務める山崎明氏も「当社はこれまで図面や見積もりの情報をデジタル化してきたが、工程表のデジタル化は最後に残された課題だった。工程表の作成はアナログで属人的な業務であるが、これをデジタル化できれば工程表のデータベースが構築できるので、将来のさらなる効率化に向けた解析も進むはず」と述べるなど、前向きな姿勢だった。

  • 清水建設 専務執行役員 山崎明氏

    清水建設 専務執行役員 山崎明氏