三洋貿易は7月5日、子供の車内置き去り事故を防止する取り組みの1つとして実施した「子どもの車内置き去り実態調査2023」の調査結果を公表した。
調査期間は2023年5月末~6月初めで、幼稚園・保育園で送迎を担当する267名(運転手、送迎担当の教諭、送迎バス運営管理者など、対象者の年齢範囲:20~69歳)と、全国の小学生以下の子供を乗せて車を運転するドライバー3377名を対象に車内置き去りの実態、危険性の認識、行動の変化などについてオンラインで調査を行ったという。
その結果、幼稚園・保育園の送迎担当者の95.9%が、車内置き去りにより、毎年のように子供の熱中症事故が発生していることを認識しており、54.3%が「今後も園児が取り残されることは発生すると思う」と回答する一方で、76.0%が「自分の園では発生しないと思う」とするなど、危機感と当事者意識のギャップが示される結果となったとする。
また、子供を乗せて車を運転するドライバーの91.6%も、車内置き去りにより毎年のように子供の熱中症事故が発生していることを認識しているが、80.8%が今後も子供の車内取り残しは発生すると回答したほか、78.9%が子供を無意識に車内へ取り残してしまうことに対する対策を行ったことはないと回答したとする。
子供の置き去り防止に向けた安全装置の2023年からの設置義務化については、幼稚園・保育園の送迎担当者の84.3%が賛成としたが、子供を乗せて車を運転するドライバーでは45.8%がそうしたシステムの存在を知らないと回答する結果が出ており、置き去りに伴う危険性の認識は高まっているものの、社会的な意識の変化には至っていないということが示されたとしており、同社では置き去り防止手法の啓発と、安全装置へのより簡単なアクセスが必要と考えられるとしている。
ちなみに米インディアナ州では2006年より、スクールバスのエンジン停止後にバス後部のボタンを押すシステムの搭載が推奨されており、2015年に新車への搭載が義務化されたが、それ以降も継続して置き去り事故が発生しており、ボタン式システムはドライバーにとって子供を探す強制力を持ち続けない可能性があるとの見解を示すほか、1年以内に小学生以下の子供を乗せて運転した成人ドライバー3377名を対象とした調査では、子供の車内放置による熱中症リスクについては9割超の認識となっているが、1年以内に子供を車内へ置いて離れた経験は20%超、そのうち1.9%の人が車内置き去りに関して無意識のうちに行っていた経験を有していると回答しており、そうした子供を車内に残した人のうち5%ほどが子供に熱中症の疑いの症状を認めたと回答したという。
同社では、今回の調査を通じて、子供の車内置き去りの危険性への認識は広がっているほか、無意識の置き去りが発生しうるという認識も広がっている一方、多くの人が未だに自分の身には起こらないと考えていることが示されたとしている。また、意識の変容には多大な時間がかかること、ならびに人の目や意識に頼る対策には限界があることから、万が一にも子供を取り残さないために、ヒューマンエラーを補完する技術を活用する自動検知式の安全装置が担う役割は大きいとの認識を示しており、適切な製品導入に向けた社会の意識向上などに向けた取り組みを含め、そうした製品が存在していることを広く社会に向けて提案していきたいとしている。
なお、現在、保育園や幼稚園のバスへの置き去り防止システムは地域差はあるものの徐々に搭載が進んでいることがうかがえるが、NPO法人Safe Kids Japanの理事長を務める医師の山中龍宏氏は、「30年以上にわたって、子供の事故予防の啓発に取り組んできが、この“自分だけは大丈夫”という考え方は、車内置き去りのみならず、あらゆる事故において共通している」とし、本当に事故を予防しようと思うのなら、保護者が認識していなくても、安全を実現する仕組みを社会全体で構築する必要があると指摘。園バスのみならず、乗用車でも熱中症予防が可能な動きにつながっていくことが、不幸な事故を防ぐことにつながるとしており、人が関与しないでも安全であるような仕掛け、装置を基本とする活動が広がっていけばと期待を語っている。