セブン‐イレブン・ジャパン(セブンイレブン)は6月8日、2013年度比で購入電力量の約60%、CO2排出量の約70%を削減するという環境負荷低減店舗の実証実験を開始すると発表した。同社は日立製作所(日立)、リコー、サンデン・リテールシステムと連携し、各社の持つ先進技術を集め、省エネ、創エネと蓄電の取り組みを加速する。
実証実験を開始した「セブン‐イレブン三郷彦成2丁目店」が同日、報道陣に公開された。電気を省いて、創って、蓄える。“ふつうのセブンイレブン”ではない新型店舗で披露された取り組みを、一つずつ紹介していこう。
先進エネルギー技術で省・創・蓄を実現
電気を省く
今回新しい省エネの取り組みとして、冷凍・冷蔵設備(サンデン・リテールシステム提供)が進化した。お弁当やおにぎりが陳列されている「チルドケース」は、上部から冷たい空気を吹き出して「エアーカーテン」と呼ばれる空気の層を形成することで、庫内を冷やしている。
今回導入した新型のチルドケースは、従来の2層から1つ層を追加して、3層構造によるエアーカーテンが形成できる。これにより、店内の空気がチルドケース庫内の冷却に影響しないよう密閉性が強化された。安定した冷却性能を維持することで省エネにつなげている。
また、アイスクリームや冷凍食品を保管する「冷凍ショーケース」の除霜制御機能が向上した。最近のコンビニエンスストアやスーパーで見かけることは少なくなったが、北海道の雪壁のような霜がびっしりと付いていた、昔ながらのアイスケースが懐かしい。
除霜とは、冷凍質周辺にできる氷や霜様の水分の結晶を取り除くことで、同社のショーケースには電気ヒーターが埋め込まれている。従来は、霜の付着の有無にかかわらず、決めた時間に一定の間隔で電気ヒーターを稼働して霜を除去していた。例えば、アイスケースの除霜は「12時間に1回」というのが長年この業界の考え方だったという。
そこで今回の実証実験では、環境センシング技術を導入。庫内や店内の温湿度センサー、霜を検知する熱交換器センサー、扉の開閉を検知するセンサーなどで冷凍ショーケースの運転状況や店内環境をセンシングすることにより、従来定時で行っていた除霜を必要なタイミングのみで行えるようになった。同技術により、季節によっては2日間で1回程度の除霜でよくなり、電気ヒーターを使う電力の削減につながる。
また、個別で導入している各省エネ設備、空調設備の使用状況などを把握して制御する日立のエネルギーマネジメントシステム(EMS)も「電気を省く」一役を担っている。同システムは、店舗内のあらゆるデータに加えて、後で紹介する太陽光パネルや蓄電池システムから得られるすべてのエネルギー情報を集約し、効率的に使用するための分析や制御を行っている。
具体的には、店舗の内外温湿度、空調機をはじめとする機器の消費電力、太陽光の発電電力などを計測。その計測した結果をもとに空調機や換気装置を制御し、省エネにつなげている。
電気を創る
「電気を創る」役割を担うのはリコーだ。同社は、複合機の開発で培った技術を応用して開発した次世代太陽電池4種類を実証店舗に設置している。
24時間点灯する店内LEDの光から発電が可能な「固体型色素増感太陽電池」、セブンイレブンの店舗カラーをイメージした「カラーシースルー色素増感太陽電池」、薄型・軽量で曲げることが可能な「有機薄膜太陽電池」、室内から宇宙空間まで、あらゆる照度で安定した発電が可能な「ペロブスカイト太陽電池」の4種類だ。店舗の窓や外壁面、チルドケースの上部など、あらゆる場所に設置されている。
固体型色素増感太陽電池は店舗内設備の壁掛け時計を、カラーシースルー色素増感太陽電池とペロブスカイト太陽電池は販促用スイングPOPを動作させる。余ったエネルギーはモバイルバッテリーに蓄電。店内の照明や壁面、窓面でも新たなエネルギー創出が可能になった。同社によると、セブンイレブンの店舗で次世代太陽電池を設置したのは国内初だという。
加えて、店舗の屋根と8台分のカーポートの屋根にも太陽光パネルを設置。駐車場にも省エネ装置を追加することにより、再生可能エネルギーの比率を高めている。これらの太陽光パネルなどにより、店舗の消費電力を上回る発電が日中にできるという。
電気を蓄える
畜エネに貢献しているのは、日立が提供する可動式の蓄電池「バッテリキューブ」だ。今後普及が見込まれる電気自動車(EV)の中古バッテリを再利用した蓄電池システムで、日中の発電によって余った電気をためる。太陽光パネルは夜間は発電できないため、夜の消費電力を蓄電池でためた電力で賄う仕組みだ。
バッテリキューブは先ほど紹介したEMSと連動しており、効率的な電気の流れになるようにAI(人工知能)を活用したシステムが制御している。また、クラウド上の遠隔監視システムにより、バッテリキューブに搭載されたEVの中古バッテリの稼働状態を随時管理し、バッテリ状態に応じた運用・メンテナンスが実現できているとのこと。
また、「CHAdeMO V2H」(グローバルで規格化されているEVの充放電方式)を採用しており、一般的なEVの充放電器に対応している。従来の定置型蓄電池よりも安全に脱着でき、停電時にはバックアップ電源として電力の供給も可能だ(バッテリの総容量は100kWh以上)。
2050年までにCO2排出量実質ゼロへ
セブンイレブンの親会社であるセブン&アイ・ホールディングス(HD)は2019年5月に環境宣言「GREEN CHALLENGE 2050」を発表。脱炭素社会に向け、2030年までにグループの店舗運営に伴うCO2排出量を2013年度比で50%削減、2050年までに排出量実質ゼロを目指している。自社の排出量(スコープ1と2)のみならず、スコープ3を含めたサプライチェーン全体での削減が目標だ。
今回の実証実験もその取り組みの一環。高い省エネ・創エネ・蓄エネ効果を実現することで、同店舗における購入電力量については2013年度対比で約60%削減、CO2排出量については約70%削減することが可能だという。
見学会に登壇したセブンイレブン 執行役員 建設設備本部長の桝尾威彦氏は、「まずは約1年間実証実験を行い検証する。コストという壁はあるが、次の出店も念頭に置いて、この取り組みを前に進めていきたい」と話した。