Snowflakeがこのほど、データを活用した日本の社会課題の解決に向けて、コンテスト「RISING 未来のデータサイエンスコンテスト」を開催した。はたして、どのようなアイデアが最優秀賞に輝いたのか?
ファイナリスト5組が社会課題解決のためのアイデアを披露
同コンテストはデータを活用したアイデアを競うもので、データ分析未経験者でも応募できるなど、人材育成の要素も持つイベント。未経験者および学生を対象とした「アイデア部門」、経験のある社会人と学生を対象とする「データサイエンス部門」があり、チームまたは個人で応募できる。
お題は、「少子高齢化が引き起こす2030年問題」「生産年齢人口の減少に伴うGDPの低下」「日本の国際競争力の低下」。データプロバイダーとして参加した7社(インテージ、ウェザーニューズ、エム・データ、QUICK、Truestar、マインディア、メディカル・データ・ビジョン)が提供するデータセットを2種類以上使う必要がある。テクノロジーはSnowflakeのほか、BIとしてTableau、Qlik、機械学習ツールとしてDataikuが提供された。
3月中旬より事前募集を開始したところ449人(アイデア部門が195名、データサイエンス部門が254人)の応募があったそうだ。4月1日から2カ月間、応募者は提供されたラーニングコンテンツを視聴して学び、5月22日にプレゼン資料を提出。審査期間を経てファイナリストに残った5組(アイデア部門2組、データサイエンス部門3組)が、5月31日に東京都内で審査員の前でプレゼンを行った。
審査員は、審査員長を務めた石井龍夫氏(稲田大学大学院経営管理研究科(早稲田ビジネススクール)非常勤講師)、それに石戸亮氏(小林製薬 CDO)、奥谷孝司氏(オイシックス・ラ・大地 専門役員COCO、顧客時間 共同CEO取締役)、志賀智之氏(ゴルフダイジェスト・オンライン 執行役員 CMO/CIO)、高橋健一氏(TBSテレビ 総合マーケティングラボ ビジネス戦略部長)の合計5人。最優秀賞に選ばれると、Snowflakeのイベント「DATA CLOUD WORLD TOUR JAPAN」で発表する機会を得られる。
アイデア部門の最優秀賞を手にしたのは?
アイデア部門は17組より、ファイナリストとして、北陸大学経済経営学部 田尻ゼミ(d-lab)の“チームあいす”こと梅野日花里氏、大岩あずさ氏、馬緤百優氏、室山桃子氏、孫遜氏のグループ、そしてニコンの名倉健太氏、吉村竜太朗氏、小野晃太氏、美濃賢佑氏、吉川介人氏のグループに絞られた。
それぞれプレゼンを行った後、審査員が最優秀賞に選んだのはニコンチームだ。同チームは、「フードデリバリーにおける 日用品レコメンドシステムの提案」として、GDPの低下を課題解決に向けたアイデアを出した。
チームを代表してプレゼンを行った名倉氏は、「GDPの50%以上を占めるのが民間消費であり、これを改善すればGDPに良い影響が出ると考えた」と説明した。民間消費の改善にあたって、家計の約25%を占めるという食費に着目し、コロナ禍で成長したフードデリバリーが日用品のレコメンシステムを取り入れることで、消費の増加を促すことができる、と仮説を展開した。
同チームが利用したのは、インテージのSCI(全国消費者パネル調査)、ウェザーニューズの各都道府県の天気、気温情報、Truestarのカレンダーデータ。顧客の属性、天気、気温などのデータを掛け合わせ、よく購入される商品のランキングを作成し、上位の商品をフードデリバリー時におすすめ商品として掲載する。
例えば、30代・男性・正社員/公務員、年収550~699万円の属性を持つ人が晴れの日によく購入する商品ランキングを見ると「気温が上がると牛乳の順位が上がる」、10代・女性・学生は「雨の日に気温が下がるほどチョコレートの順位が上がる」といったことがわかったという。
「料理を注文する時に、顧客の属性、天気や気温を考慮しておすすめ商品をアプリに表示し、合わせて購入してもらうシステムを考案した。このシステムを通じて消費増加を促すことで、日本の民間消費、ひいてはGDP成長に寄与できると考えた」と名倉氏。
名倉氏は入社4年目。ニコンではIT部門に所属しているが、データ活用を社内でもっと広げていきたいと考えているという。「土壌を作らなければダメだと考えている」と名倉氏。今回のコンテストへの応募について、「データの分析をビジネスにつなげなければ意味がない。自分自身、ビジネスとデータをつなげることが課題で、進んでいる人がどんなふうに考え・取り組んでいるのかを見たかった」と動機を説明した。
上司を説得し、基本的に業務時間に取り組んだが、土日も作業したとのこと。「このコンテストは貴重な学びがたくさんあった。早速、明日社内で報告します」と笑顔で話していた。
惜しくも最優秀賞から漏れた北陸大学のチームあいすのテーマは、「生活習慣病患者を減らし、 10年後の健康な高齢者を増やそう!」。生活習慣病患者を減らすため、対象地域別に健康関連商品の売り上げ、5大栄養素ごとの売り上げを可視化し、健康意識と栄養バランスの面から総合評価をし、その結果をスーパーやコンビニなどに掲示してもらうというアイデアを提案した。