新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は6月1日、「部素材からのレアアース分離精製技術開発」(以下「新事業」)において、未利用資源や使用済みの部素材から重レアアースを分離精製する技術の開発を行う研究テーマを採択したことを発表した。

「2050年カーボンニュートラル」の実現にはモビリティなどの駆動機構の電動化がカギとなっており、EVやエアコン、風力発電機などで使われる電動モーターの大幅な需要増加が見込まれている。電動モーターで部材として使用されているのがネオジム磁石で、その重要成分には重レアアースが含まれている。

重レアアースは、レアアース(希土類元素)のうちランタノイドに属し、原子番号64のガドリニウム(Gd)から同71のルテチウム(Lu)までの計8種類の元素のことを指す。この中で、特に同65のテルビウム(Tb)と同66のディスプロシウム(Dy)は、ネオジム磁石に高い保磁力を持たせて、耐熱性を高める成分として使われている。

重レアアースの大きな課題は、特に分離精製工程に関して、コストなどの関係で廃ネオジム磁石を海外へ輸出し、そこで加工された再生品を再び輸入しているなど、資源供給リスクが高い点だ。そのため分離精製工程について、日本国内で事業化可能な国産技術を開発することで、重レアアースの資源確保、国内での資源リサイクルを推進していく必要があるという。

このような背景の下、NEDOは新事業で、未利用資源や使用済み部素材から重レアアースを高効率、低環境負荷で分離精製し、精錬する技術の確立に向けた研究テーマを採択したとする。廃棄されたEVなどに含まれるネオジム磁石廃棄物や、ネオジム磁石製造時の切削くずなどの未利用資源から高効率、低環境負荷で重レアアースを選択的に回収する製造技術を開発し、日本国内での資源循環ルートの構築を目指すとしており、これにより、日本国内における素材産業の安定化と将来の供給リスク解消に貢献するとしている。

なお新事業の期間は2023年度~2027年度の予定で、事業規模は5年間の総額で17.6億円を予定しているとのこと。また具体的な研究開発項目は、「未利用資源からの重レアアース回収技術の開発」と「Dy/Tbの高精密相互分離技術および精錬技術の開発」だ。

  • 今回の事業の開発内容。

    今回の事業の開発内容。(出所:NEDOプレスリリースPDF)

前者については、夾雑物が多い未利用資源から、DyやTbなどの重レアアース群を選択的に濃縮し、回収するプロセスを開発する。そして後者については、(1)DyとTbを高精密で相互に分離する技術と、(2)省エネルギー化および環境負荷の低減での実施を可能にする精錬技術としての新規電解還元法の2点の開発が進められる。なお新事業の実施体制については以下の通り。

  • 新事業の実施体制。

    新事業の実施体制。(出所:NEDOプレスリリースPDF)

NEDOは今回の事業を通じて、日本国内における素材産業の安定化と将来の供給リスク解消に貢献するとしている。