続いて、尿検査でも鉄欠乏状態の有無の推定が可能かどうかの確認が行われた。血清フェリチン12ng/mL未満を「鉄欠乏者」、それ以上を「非鉄欠乏者」とし、男女別にそれぞれの尿フェリチン測定数値を調査。その結果、男女ともに鉄欠乏者は非鉄欠乏者に比べ、尿フェリチンの平均値が有意に低いことが確認された。研究チームはこのことから、尿フェリチンを測定することで鉄欠乏状態の有無を推定できる可能性が示されたとする。

  • (左上)都内の中学校における中学1年~3年生の鉄欠乏症者の割合(血清フェリチン<12ng/mL)。(右上)尿フェリチンの判定結果と実際の鉄欠乏症状態の有無。(下)血清フェリチンによる鉄欠乏者と非鉄欠乏者の尿フェリチン測定数値。

    (左上)都内の中学校における中学1年~3年生の鉄欠乏症者の割合(血清フェリチン<12ng/mL)。(右上)尿フェリチンの判定結果と実際の鉄欠乏症状態の有無。(下)血清フェリチンによる鉄欠乏者と非鉄欠乏者の尿フェリチン測定数値。(出所:ファンケルWebサイト)

最後に、尿フェリチンが鉄欠乏状態のスクリーニングに有用であるかのかどうかが検証された。男女別に鉄欠乏の疑いを判定する尿フェリチン基準値の算出を、尿フェリチンの測定結果より統計的に行い、基準値より高い場合が「鉄欠乏疑い無し」、低い場合が「鉄欠乏疑い有り」とされた。その結果、尿フェリチンの測定で鉄欠乏疑い有りと判定された女子は68人、男子は66人で、鉄欠乏疑い無しは女子201人、男子227人だった。

鉄欠乏疑い無しと判定された学生のうち、血清フェリチンの測定でも鉄欠乏状態でないと判定された「非鉄欠乏者」の割合(陰性的中率)は、女子学生で98.2%、男子学生で94.0%と高値となった。これにより、血清と尿のそれぞれの陰性判定には大きな乖離がないことが確かめられたとする。

鉄欠乏状態の判定はこれまで血液検査で実施されてきたが、中学生などの思春期の子どもたちにとって血液採取は、少なからず身体に負担がかかってしまう。そのため、事前にスクリーニングを実施することで、負担なく鉄欠乏者を見逃さない可能性が大きくなるとする。

今回の調査では、すべての鉄欠乏者を判別するまでには至らなかったが、陰性的中率は高く、採血を不要とする尿フェリチン測定が鉄欠乏状態のスクリーニングには有用な方法である可能性が示唆された。鉄欠乏によって引き起こされる不定愁訴は人によって症状はさまざまで、状態が進行するまで気付きにくいとされる。研究チームは今回の結果から、尿フェリチン検査の活用により、非侵襲的に鉄欠乏状態を早期に発見し対処できる可能性が期待されるとした。

なお、学校検診では血液検査が任意項目であるのに対し、尿検査は必須項目であるため、毎年全学校で実施されている。今後はさらにスクリーニングの精度を高める研究を進め、学校検診や子どもを対象とした栄養素提供サービスへの尿フェリチン検査の活用も検討していくとしている。