ファンケルは5月25日、中学生の学校検診で行う尿検査において効率良くスクリーニング評価を取り入れ、問題となっている鉄分の不足(鉄欠乏)状態を非侵襲的に発見できる可能性を見出したことを発表した。
同成果は、ファンケルと東京都予防医学協会の共同研究チームによるもの。詳細は、2023年4月14日から16日まで東京で開催された第126回日本小児科学会学術集会にて発表された。
思春期の子どもにおける鉄の欠乏は、記憶力や認知力の低下を起こす危険性が指摘されており、学校生活への影響も懸念されている。鉄欠乏状態は、血清フェリチンを測定することで判定されるが、静脈採血による検診は侵襲性を伴うため、現状、学校検診での導入・実施については進んでいないという。なおフェリチンとは、鉄を貯蔵するタンパク質のことだ。
ファンケルはこれまでの研究で、成人の尿フェリチンが血清フェリチンと相関することを明らかにし、非侵襲的な尿検査で鉄の充足状態を評価できることを確認済みだった。しかし、未成年者の鉄の充足状態が尿フェリチンで判定できるかについては調査できていなかったとする。そこで今回の研究では、中学生の血液および尿検体を用いて、未成年者においても非侵襲的な尿検査で鉄欠乏状態を把握できるかどうかを調査したという。
今回の研究では、学校検診で取得した東京都内の中学1年~3年生の生徒562人(女子269人・男子293人)の血液および尿の検体を用いて、鉄欠乏の鋭敏な指標であるフェリチン(血液検体から血清フェリチン、尿検体から尿フェリチン)が測定された。そして血清フェリチンの測定結果から、鉄欠乏者と非鉄欠乏者を分け、それぞれの該当者で尿フェリチンの数値を比較。さらに、尿フェリチン検査による鉄欠乏状態を検出するスクリーニングの可能性の評価も実施された。
一般的に鉄欠乏状態と判定されるのは、血清フェリチンが12ng/mL未満で、該当する女子中学生の割合は1年生11.7%、2年生17.2%、3年生28.0%で、学年が上がるとともに鉄欠乏と判定された学生が増加したという。一方で、男子中学生の鉄欠乏状態の割合は1年生7.9%、2年生1.0%、3年生4.3%で、時期に対応した変化は見られなかった。
思春期は急激な発育に伴い、鉄の需要が増加する。特に女子では、月経により鉄の排出量が増加するため、鉄欠乏状態に陥りがちだ。思春期の鉄欠乏は、記憶力や認知力の低下を起こす危険性も指摘されており、鉄欠乏状態を早期に発見し、対策することが重要だとする。